「肺がん」治療法を提案、「子宮頸がん」「乳がん」への取り組みも AIが切り拓くがん治療の最先端

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一子相伝

「まだ実験段階のため、どのような患者さんに対しても、必ずそうなるという検証はできておりませんが、85%以上の精度で発見することができました」

 と胸を張るのは、産総研人工知能研究センターの坂無英徳チーム長だ。どんな方法なのかと聞くと、

「砂嵐のようなモノクロ画像には乳腺という組織が層状に写っていて、その中に時折、黒い塊のように写るのが腫瘤です。それが本物か否か。我々のAIは、発生した場所、大きさ、形などを判別し、ただの影や超音波で生じたノイズなのか、腫瘤なのかを瞬時に見分けます」

 診断に用いるエコー画像は動画だ。通常の検査は、医師が器具を乳房に押し当て、動かしながら、おやっと違和感を覚えることでがんの可能性を疑う。

「医師は普段から正常な画像データを大量に見ることで、異常な画像データに気づく。けれど、この技術は一子相伝のようなものでスキルに差が出やすい。都市部の大きな病院では毎日診断があっても、地方ではないという地域格差も生じています。医師がAIを使うことで、ベテランでも若い方でも同じような高いレベルの診断ができます」(同)

 実用化に向けてメーカーと調整中だそうだが、乳がんと診断されてからも、AIは患者の助けとなる。

 5月18日、日本乳がん学会で発表を行った東京医大教授・慶應大学特任教授の杉本昌弘氏が言う。

「抗がん剤の投与やホルモン治療など、事前に乳がんを小さくして手術を行う『術前化学療法』が標準的になっていますが、私たちはその療法を施された際の再発や、骨などへの転移をAIに予測させるシステムを開発しています。患者の年齢、BMI、閉経状況、がんのステージなどを分析し、予後診断をすることで最適な治療法を提案したいのです」

週刊新潮 2018年5月31日号掲載

特集「『AI&ゲノム』が一変させる『がん治療』の最前線」より

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