タワーマンションは30年後にスラム化で社会問題に発展「国交省幹部」の懸念

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スラム化の最悪シナリオ

 前出の関係者が解説する。

「1998年に埼玉県川口市に建てられ、当時は『日本一の高いマンション』として知られた『エルザタワー55』は2015年から大規模修繕を実施しています。工期は2年、費用は約12億円です。低層マンションなら数億で済むものもありますから、やはり高額でしょう。07年から修繕の検討を始めましたが、前例が少なく、管理組合が見積もりの妥当性を判断できないという問題に直面しました。結果、委託するコンサル会社の選定から始まったそうです。650戸が一丸となって大規模修繕の実施にまでこぎつけたのは奇跡と表現しても過言ではないと思います。外国人が多く住んでいたり、投資目的で買い荒らされたりしたタワーマンションの管理組合では、大規模修繕を前に四分五裂する危険性も少なくないでしょう」

 管理費を払っていても、修繕費の積み立てが行われているかは分からない。真面目な組合は将来に備えているが、少しでも安く売ろうとしているタワーマンションの場合は曖昧な状況になっていることもある。

 景気や経済情勢という問題もある。これから10年後、人手不足がどこまで進み、賃金の水準はどこまで上がり、それを元にどこまで大規模修繕のコストが値上がりするか、管理組合が予測するのは難しいだろう。

 以上のような現状を考えると、最悪のシナリオは複数存在する。大規模修繕に伴う追加費用の要請を嫌がり、所有者が退去、住民減少に伴って修繕費が捻出できなくなるパターン。「自分が生きている間、タワマンが保てばいい」と判断した高齢者や投資目的の中国人所有者が、管理組合で修繕反対論を唱え、収拾がつかなくなるケース――といったところだ。

「修繕が実施できなければ、資産価値の下落は確実です。そうすると資産に余裕のある入居者や、外国人投資家、法人購入分は売却して逃げ出す可能性が高くなります。金銭的余裕の乏しい層だけがタワマンにしがみつき、いわゆる“負動産”を連想させる状態になるはずです。空き戸だらけのタワマンに、僅かな高齢者がしがみつくようにして住むわけですから、率直に言ってイメージは最悪です。不動産価値の下落が周辺の治安に影響を与えれば、一気にスラム街が誕生することになります」(同)

 住民が一致団結して大規模修繕を成し遂げ、「終の棲家」として立派に管理、運営したとしても、少子高齢化社会の悪影響には抗えないという悲観論も根強い。

「高度成長期に開発された都内のニュータウンなどが前例ですが、住民の年齢層が近似していると、地域全体で高齢化が進行してしまいます。つまり街としての新陳代謝が止まってしまうわけです。今はタワーマンションに若い夫婦や小中学校の子供たちが住んでいても、子供は成人すれば出ていきます。そして少子高齢化社会の進展に伴い、30年、40年後には高齢者夫婦だけが住むタワマンになります。周辺の不動産価値が下落し、貧困層が流入してくれば最悪のケースです。これもスラム化の危険が懸念されます」(同)

 冒頭で「タワマンを建てた建設業者も、売った不動産業者も、実情を知る関係者は」、うかつに手を出さないと紹介した。東京五輪が終わる頃、不動産バブルも弾けるという予測もある。

 どうしてもタワマンを購入したいのならしかたないが、やはり「石橋を叩いて渡らない」くらい慎重でもよさそうだ。たとえ得をしなくとも、損をすることは防げるのだから……。

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週刊新潮WEB取材班

2018年1月9日掲載

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