上階で殺人事件! 部屋を汚されたのに「復旧資金は自分負担!?」

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「水漏れの裁判は決して珍しいことではない」と弁護士。明日は我が身……かもしれない ※写真はイメージ

 国際結婚をしてアメリカで暮していた久川涼子さんに一本の電話が入った。独身時代に購入し、現在は賃貸として貸し出していた部屋が水漏れのトラブルにあったらしい――と。マンションにかけつけた久川さんを待っていたのは上階から降り注ぐ血液混じりの大量の水と警察官だった……。

 上階で殺人事件が起きたのだ。そしてあろうことか犯人は水回りを破壊し被害者の血が混じった水が久川さんの部屋に大量に流れ込んでいたのだ。降ってわいた災難になんとか対処しようとした久川さんに、いくつもの壁が立ちはだかった。その散々な顛末を久川さんに聞いた。

■“壁” その1
「水漏れ事故の復旧資金は、マンションの共有保険で賄えると思っていたら、これがだめだったんです」
 水漏れの原因となった水回りの破壊は「事故」ではなく「故意の破損」と判定され、保険金は出ないと判明。ということは、自己負担?

■“壁” その2
「マンションの管理組合の定例会に出て報告と相談をしたんですが、傍観を決められてまったく力になってくれなかった」
 物件を賃貸に出していたため、すでに資産価値を下げていると、その対応はけんもほろろ。

巨額の工事費→業者の水増し請求→保険会社の出し渋り→傷アリ物件の処理→賠償裁判→法律の壁

■“壁” その3
「賃貸を仲介していた不動産業者から、契約の解除の通達があったんですが、それだけじゃなく、賃借人の家財の補償と引っ越し費用は大家の責任と言われた」
 その額約100万円。なにも落ち度がない一介の大家が、なぜそんな責任を負わなくてはならないのか?

■“壁” その4
「リフォーム会社が提示してきた回復費用は1334万円。一ケタ違うんじゃないかと思った」
 その額は果たして妥当なのかどうか、どうしたら適正な価格がわかるのか?

■“壁” その5
「すべて、原因は上階の人。だから修繕の費用や賃借人への補償も当然、そちらで責任を負ってくれるものと思ってた」
ところが肝心の容疑者は警察に拘束されており、おまけにアル中の心神喪失状態で責任を問えるかどうかもわからない。唯一の親族はお金を持って蒸発。

「私は何も悪いことしてないのに……呆然として、言葉を失いました。だけどその時点では、私には反論できるだけの知識もなく、ただ泣くしかなかった」
 そんな時、事情を話した友達に、強烈に叱られる。

「甘いね、あんた、舐められてるよ」

 その一言に目を覚まされた久川さんの闘いが、ここから始まる。

 涙と汗にまみれながら久川さんは根性で壁を一つ一つ乗り越えていったという。
 その顛末を『実録 水漏れマンション殺人事件』(新潮社)にまとめた久川さんは、災難をまのあたりにした当時の自分を振り返り「こっちが弱みを見せて泣き寝入りしてたら裸にされてしまいます」と語る。

 とにかく自分の目で確かめ、詳細に経過を記録して、わからないことは第三者の専門家の意見を聞くことで、自分にできること、せねばならないことを見極めて、一つ一つ積み上げていくことが大切だと、久川さんは語る。

 こんな事件、自分にふりかかることなんてないと思うのが大方の人の反応だ。久川さんだってそう思っていた。
「先日、お世話になった弁護士の方に挨拶に行ったら、ちょうどマンションの水漏れ事故の案件が舞い込んだので、久川さんを参考にしてと教えたと言ってました(笑)。さすがに殺人事件は絡んでないけど、水漏れの裁判は決して珍しいことじゃないんですね」
 明日は我が身、かもしれないこの事件、ところであなたのマンション、大丈夫ですか?

デイリー新潮編集部

2017年2月9日掲載

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