アスリート並の運動、風邪の原因に? 駅伝選手が体調を崩すメカニズムとは 「免疫力」を高める科学的方法

ライフ 食・暮らし

2017年01月02日

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 ちょっとした生活習慣の改善で、「免疫力」は高められる――ウイルスを処理する抗体を作り出す「リンパ球」、そしてそのなかでも、平熱のときに体内を“捜査”する「ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)」は、体温を上げることや、空腹によって活性化するという。

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酒を飲むと免疫力が上がる?

 免疫力を高めるうえでも、酒とタバコの害をどの医師も指摘するが、酒については、条件次第では推奨されるのだそうで、

「適量のお酒を飲むことで、逆に免疫力が上がるという実証データがあるのです」

 と、日本医科大学付属病院の医師、李卿氏は言う。

「ビールなら350ミリリットル缶、日本酒なら1合、ワインなら200ミリリットルぐらいが目安です。10人ほどの小さな実験でしたが、たしかに飲酒したグループのほうがNK細胞が活性化したと確認されました。血管が拡張して循環がよくなること、適量のアルコールが免疫細胞を刺激することが、背景にあると考えています」

■生きた乳酸菌を大量に

ヨーグルトや納豆を毎朝とることが大切

 だが、いちど飲みはじめたら、この程度では済まないのが酒飲みのサガである。しかし、乳酸菌をとる際は、遠慮は要らないようだ。

 免疫細胞がたくさんいるのは腸内だという。総合内科専門医で秋津医院院長の秋津壽男氏によれば、

「免疫細胞の7割は腸内に存在している」

 とのこと。そこで健気に働いているというのだ。

「侵入してきたウイルスを腸管のなかでやっつける働きに加え、腸内から全身に向けて、ウイルスの到来を伝えるスイッチの役割も果たしています」

 であれば、腸内環境が健全であるほど免疫システムも働きやすいわけだ。

「慢性的な便秘や過度な飲酒で腸内環境が悪くなると、免疫力は下がる。そこで整腸作用がある乳酸菌、つまりヨーグルト類が注目され、納豆や漬物、味噌など発酵食品も効果的です。これらを摂取することで腸内の善玉菌が増え、全身の免疫機能も高まるのです」(同)

 事実、秋津氏も毎日、乳酸菌をとろうと心がけているそうだが、大事なのは、

「生きた乳酸菌を毎日、大量にとること。お腹を壊して1日に何度も下痢をする状態だと、腸内が空っぽになって、腸内環境を一から構築する必要が生じる。そうならないためにも、ヨーグルトや納豆を毎朝とることが大切で、私は500ミリリットル程度のものを2日で1パック食べています。“たくさん食べても菌は死んでしまうから意味がない”と話す医師もいますが、ヨーグルト1パックに何千億という乳酸菌が含まれているので、仮に99・9%が死んでも、残る乳酸菌の数は少なくないのです」

 とはいっても、バランスがいい食生活があっての乳酸菌だ。李氏が言う。

「朝食をとらない人は免疫力が落ち、一方、三食きちんととる人は免疫力が高い。その三食もビタミン、タンパク質、脂肪、糖分をバランスよくとる。食べすぎも間食もいけません」

■筋肉をつけ、動かす

 冬場は、体温が1度下がると免疫力は約30%下がるという。体の熱量を上げるひとつの方法として、総合内科専門医で池谷医院院長の池谷敏郎氏は、

「熱を作り出す器官である筋肉をつけ、筋肉を動かす習慣をもつことが大事」

 だと説く。それに筋肉は、身体がピンチに陥ったときの「最終兵器」だという。

「病気になると、筋肉が破壊されてアミノ酸が放出され、免疫力の向上につながるという実験データがある。だから、風邪をひいたあとでも、重症肺炎を予防するうえで、筋肉の役割は重要だと考えられています」

 言うまでもなく、筋肉をつけるのに必要なのは、運動と食事である。

「日ごろのウォーキングなどが大事ですが、それを行うためには、エネルギー源となる食事が大切。はやりの炭水化物抜きも度がすぎればエネルギー不足となり、ひいては筋肉の減少にもつながって、いざというときに反応できなくなってしまいます」(同)

■過度な運動はNG

なぜアスリートは風邪をひいてしまうことが多いのか

 一方、運動に関しては、アスリートのように体を鍛えればいいのかというと、そうではないという。

「実は強靭な肉体と体力をもったアスリートも、試合後は風邪をひいてしまうことが多い。運動のしすぎで疲労が蓄積し、免疫力が下がってしまうためです。市民ランナーがマラソンに出場したあと、体調を崩してしまうのも同じ理由で、過度にならない適度な運動が求められます」(同)

 順天堂大学准教授の竹田和由氏(免疫学)が、さらに踏み込んで説く。

「運動している間は(NK細胞が活性化する)NK活性も認められ、NK細胞も増え、増加数などは運動の強度に比例します。ところが、運動をやめた途端にNK活性はドーンと落ち、落ちている時間は運動している時間の4倍くらい続きます。だから、90分のサッカーの試合を終えると、その後360分は免疫が極端に落ち込むのです。正月の箱根駅伝では毎年風邪をひいて休む選手がいますが、それもこのパターンで、そこにメンタルのストレスがかかると、NK細胞は一発で落ちてしまいます」

 だから、やはり適度な運動が求められるわけで、

「適度には個人差がありますが、一応の目安としては心拍数100くらい。笑いながら、話しながらできる運動といわれています」

特集「伝染ってしまう前に出来ることがある!『免疫力』をぐっと高める7つの科学的方法」より

週刊新潮 2016年11月17日号掲載