女子体操界のエースだった菅原リサさん「知識もないまま無茶していた」 生理は止まる! 骨密度は老人並み! 美談ですまない「女性アスリート」過酷の日々(3)

スポーツ

  • ブックマーク

 本来、月経や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などは、デリケートな話題。しかし、女性アスリートは、徐々に重い口を開くようになってきている。

 アトランタ五輪はじめ数々の国際大会で日本代表として活躍。90年代の女子体操界をエースとして牽引した菅原リサさん(38)。

 父はアジア大会銀メダリスト、母はミュンヘン五輪代表という体操一家で育ち、埼玉の戸田市スポーツセンターで体操を始めたのは小1の頃。競技への意欲は人一倍あったが、中学後半から体重管理に悩まされた。

「生理が来ると体重管理が難しいと言われていたので、中2で初潮を迎えた時はショックでした。親にも言い出せず、近所のおばさんに“どうしよう!”と泣きながら報告したら“大丈夫だよ”と慰められて。でも、自分では食べ過ぎたから生理が来たのかなと、すごく自己嫌悪に陥りましたね」

 体重が500グラム増えるだけで身体も重く感じ、鉄棒の車輪が回りづらい。段違い平行棒のタイミングが掴めず、失敗の数が増えた。

 149センチで42キロ台を守るため、1日十数回は体重計で量る。練習の合間には厚着をして走り込み、少しでも体重が増えると、朝晩の食事を抜いて一食だけで済ますことも多かった。

「体重が増えると怒られるのが嫌で、何の知識もないままむちゃをしていたと思う。月経不順もずっとあったけれど、競技に集中していたので、今が良ければいいと突っ走っていました」

 日本体育大学時代は、20歳を過ぎても初潮が来ない人、疲労骨折で苦しむ人も見ており、摂食障害の選手も多かった。菅原さんは体操界の現状をこう語る。

「自分が選手だった頃とは全く違う感じがしています。今は世界の選手を見ているとパワーのある子がいいという流れがあり、アメリカの選手も逞しい体つきではるかに難度の高い技をこなしている。昔は細くて当然という意識が強く、私自身もむちゃな体重コントロールをしながら適正体重を守ろうと必死でしたが……」

 引退後は結婚して2人の娘を持つ母となり、今はコーチとして女子選手を見ている。体操界の流れも変わるなか、選手自身が目指すスタイルに応じて体づくりをする。毎日体重を量る習慣はつけるが、本人と話し合って目標を決め、栄養指導も心がけているという。

歌代幸子(うたしろ・ゆきこ)
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、女性誌の編集者などを経て独立し、ノンフィクションライターとなる。スポーツ、事件、教育など、さまざまな分野を取材し、記事を執筆している。著書に『私は走る―女子マラソンに賭けた夢』など。

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

「特別読物 生理は止まる! 骨密度は老人並み! 美談ですまない『女性アスリート』過酷の日々――歌代幸子(ノンフィクションライター)」より