習近平氏“一強”体制に渦巻く不穏な空気…「人民解放軍」「太子党」にも容赦しない大粛清で“孤独な最高指導者”をおびやかす反撃の狼煙は上がるか

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 前編【「73歳の最高権力者」にくすぶり続ける健康不安説…「意識喪失」「緊急搬送」も取り沙汰された習近平主席、“最大の謎”はなぜ「院政」ではなく「終身独裁」を目指すのか】からの続き──。新華社通信は8月28日、人民解放軍の指導機関である国家中央軍事委員会が張又侠副主席の解任を決定したと報じた。振り返れば今年1月に中国国防省が「重大な規律違反、法律違反の疑い」を理由に張副主席を立件・調査すると発表した時には文字通りの激震が走った。何しろ習近平・国家主席と張氏は「幼なじみだった」という情報すらあり、共に手を携えて出世街道を歩んだ2人だったからだ。(前後編の後編)

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 習主席が政治のトップなら、張氏は軍制服組のトップ。「幼なじみ」かどうかは断言できないにしても、彼らの父親が深い親交を持っていたのは紛れもない事実だ。2人はいわば“中共エリートの子弟”として頭角を現してきた。

 当たり前だが、これほどの超大物になれば習主席の許可か黙認なしには身柄を拘束することはできない。

 もし日本が独裁国家だったとすれば、捜査機関が自衛隊の制服組トップである統合幕僚長の身柄を抑え、御用メディアが汚職の可能性について言及。この異常事態に日本を研究する各国の専門家が分析を行い、「汚職が事実かは分からないが、少なくとも首相が統合幕僚長の逮捕にゴーサインを出した可能性が高い」と指摘した──という状況だろう。

 だが、事態の進行は決してスムーズではなかった。1月に張又侠氏の立件が発表されたにもかかわらず、その後、中国政府は沈黙を守った。それが8月になって新情報が公開された理由として、10月に開かれる5中全会党中央委員会第5回全体会議)で正式に処分が発表されるためではないか、という観測が飛び交っている。

 田中三郎氏は中国軍事問題の研究家として知られ、月刊誌『軍事研究』に発表する論文は高い評価を受けている。

軍で吹き荒れた激しい粛清

 田中氏は防衛大学校から陸上自衛隊に進み、一貫して中国人民解放軍の調査、研究を積み重ねてきた。中国の専門家だけあり、自衛隊から外務省に出向した経験も持つ。

 田中氏は「習主席と人民解放軍の上層部は台湾侵攻を巡って深刻な対立が生じ、習主席は大粛清を実行しました」と言う。

「古来、島国への侵攻は失敗することが多いのです。古くは元の日本侵攻、第2次世界大戦でドイツはイギリスに侵攻できませんでしたし、アメリカも日本の本土侵攻は甚大な被害が出るとして二の足を踏みました。張又侠氏など人民解放軍の上層部も台湾侵攻は亡国の戦争に他ならないと強く反対してきました。特に張氏は1979年の中越戦争に前線の指揮官として従軍しており、戦場の悲惨な実態は骨身に染みています。無用の戦争は避けたいという思いは強いのです。ところが台湾併合を主要政策として大きく掲げる習氏は命令不服従として粛清に乗り出します。2023年の第14期全人代(全国人民代表大会)第1回会議の時に281人を数えた軍の全人代代表は、今年3月5日から12日に開かれた第4回会議では243人に減りました。13・5パーセントの減少は、軍に対する粛清がどれほど激しかったかを物語ります」

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