上白石萌音の演技力が「図抜けている」 江戸の町娘が現代の教師に憑依する異色ドラマが話題なワケ

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 秋ドラマにはタイムスリップ劇がある。TBS「いろはの恋は時代をかける」(火曜午後10時)である。舞台は現代と江戸時代中期。主演の上白石萌音(28)は、小学校教師と町娘の二役を演じている。放送済みの第1回は出色だった。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 ドラマ制作者たちの間で最も話題の作品と言っていい。タイムスリップ劇は珍しくないものの、この作品は独創性に富むからだ。SFファンタジー、教育風刺劇、ラブコメなどの要素を併せ持つ。

 同じTBSの「JIN-仁-」(2009年)などでは、主人公が現代と過去を行き来した。これがタイムスリップ劇のテンプレだ。しかし、この物語はそうではない。

 1685年の江戸で暮らしていた飛脚屋の娘・いろは(上白石萌音)が、その魂だけが現代にタイムスリップ。小学校教師・梨木彩葉(同、二役)の体に憑依する。

 目の付けどころが抜群である。これにより、江戸時代の町娘が現代の教師になるという、前代未聞の物語が始まる。

 彩葉は真面目で内向的。一方、いろはは勝ち気で物おじしない。対照的な2人を演じ分けるのは容易ではない。突出した演技力を持つ上白石の存在があるからこそ、成立する物語でもある。

 第1回を簡単に振り返りたい。彩葉は東京の渋谷区立渋谷第三小学校で3年3組を受け持っている。だが、心の晴れない日々を送っていた。現代の教師の仕事は過酷だからだ。

 児童の成績を伸ばさなければならないが、家庭で甘やかされているため、簡単には言うことを聞いてくれない。かといって厳しく指導すれば、親が黙ってはいない。

 教師が教室の王様だった昭和期とはまるで違う。彩葉は前任校では心を病み、1年間の休職を余儀なくされた。

 現実もほぼ同じ。だから教員志望者は減っている。全国の小学校教員採用試験の倍率は、2000年度の12.5倍から2025年度には2.0倍にまで下がった。

 それでも、教師の受難を描くドラマは極めて少ない。重い話になったり、お説教臭い物語になったりするからだ。親を批判すれば反感を買う。

 しかし、この物語は教育現場の実態を盛り込みやすい。町娘が教師になることで、「これはあくまでSFファンタジー」という前提が視聴者との間で共有されるからだ。

 フジテレビの政治風刺ドラマ「ポリティカルパン」(水曜午後10時)が、日本ではなく架空の国・ニッポニアを舞台にしたことと似ている。これにより、政界を批判しやすくなった。

 物語の彩葉は思い詰め、渋谷のビルの屋上から飛び降りようとする。たまたま下にいた同僚教師の一ノ瀬生琉(向井康二)は、止めようとして屋上に駆け上がる。一ノ瀬もまた、悩める教師だ。

 屋上で一ノ瀬は彩葉に対し「落ち着いて、動かないで」と声を掛けた。彩葉も死ぬ覚悟ができていなかったようで、この言葉に反応。一ノ瀬に向かって手を伸ばす。

 一ノ瀬はその手をつかもうと歩み寄るが、つまずいてしまい、彩葉の顔を思いっきり押してしまった。そそっかしい男なのだ。

 彩葉は落下した。万事休す。ところが、次の瞬間、なぜか一ノ瀬は彩葉の手をつかんでいた。いや、正確には、彩葉の姿をしたいろはである。

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