上白石萌音の演技力が「図抜けている」 江戸の町娘が現代の教師に憑依する異色ドラマが話題なワケ

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数学界の巨人が登場

 いろは自身は向学心が強い。特に算学が得意だった。1685年のいろはは、実在した数学界の巨人・関孝和(大森元貴)の算法指南所に通っていた。町娘なので正規の生徒になる資格はないが、押しかけるようにして指南所を訪れていた。

 指南所に向かって走るいろはは、顔いっぱいに笑顔を浮かべていた。いろはの学びに対する思いのすべてが、その顔に表れていた。やはり上白石の演技力は図抜けている。

 関は、武家の子息である生徒たちがいろはを侮ると、「腕前はそこらの武家にひけをとらんぞ」とたしなめた。関はいろはの才能を買い、かわいがっていた。

 いろはも関を尊敬し、慕っていた。関はいろはが急にいなくなったことを心配している。2人はまた会えるのか。

 鎖国が解かれたあとに分かることだが、当時の関の数学は世界最高水準に達していた。紛れもなく天才だった。面白い人物を物語に加えたものだ。

 一方、現代のいろはは、姿を消した彩葉に代わって、教壇に立つことを望む。一ノ瀬に「オレじゃダメか?」と尋ねる。江戸中期には女性が学ぶことも教えることも難しかったが、いろはは教育者になることが夢だったのだ。

 彩葉が6年分の指導予定を記したノートを作っていたため、いろはが教師になるのは可能であるはずだ。指導ノートの存在を設定に組み込んだ点は巧みだった。

 一ノ瀬はいろはの熱意に打たれ、彩葉の代役を務めることを認める。いろはは「いいのかよ!」と、飛び上がらんばかりに喜ぶ。どの時代に生きる人間であろうと、その人の夢がかなう瞬間を見るのは気持ちがいい。

 初登校の日、いろはは児童に向かって「本日より、よろしく願います」と仰々しく挨拶した。児童たちはあっけにとられた。いろは流を押し通せば、児童や親、同僚との衝突は必至だ。

 見どころはまだある。価値観も常識も全く違う、いろはと一ノ瀬は恋に落ちるのか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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