ベテラン実況アナが「CS導入で球場の雰囲気が様変わりした」と語る理由…「担当するチームが優勝争いに絡まないと実況はうまくならない」の深い意味
クライマックスリーズ・ファイナルステージも大詰め。連載前回で、興行面から見たシリーズの裏側について説明してくれた村上和宏さんは、東海ラジオで35年間、プロ野球実況に携わってきました。そこで今週は、クライマックスシリーズならではのグラウンド内の変化、そしてファン心理について説明してくれます。
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球場の盛り上がりが…
前回はクライマックスシリーズ(以下、CS)の「影の部分」にフォーカスしましたので、今回は「光の部分」について触れます。
CSで最も光を放つのが、ファンの盛り上がりです。
ペナントレースの優勝チームがそのまま日本シリーズに出場していた時代は、優勝チームのファンはシリーズに向けて大いに盛り上がります。しかし、残り5チームのファンにとって、優勝が決まった翌日からは贔屓チームの勝敗は大きな意味を持たなくなっていました。いわゆる「消化ゲーム」となるからです。
そうなるとファンの興味は選手のタイトルレースに移り、ドラフトの有力選手など、翌年に向けての話題が中心となっていました。
長年、プロ野球取材に携わってきた一人として、肌感覚をそのままお伝えしますと、CSが始まってから、スタンドの空気がガラッと変わりました。
まず、3位以内に入ればCSに進出できるので、2位と3位チームのファンは、優勝を逃しても、Aクラスを確保できるよう、ペナントよりも大きな声援を送ります。2位と3位が僅差であれば、一つでも上の順位に向け、応援にも一層熱が入ります。
優勝チームが決まったあとは事実上、ペナントレースは終わってしまったようなものでしたが、CS導入後は2位と3位が確定するその日まで、ペナントが意味あるものとして継続するわけです。
年間シートをお持ちで1シーズンに何度も球場に足を運ぶ方なら、肌感覚でこうした変化を感じられているでしょう。ただ、大半の方は、1シーズンに観戦する機会は限られていると思います。CS導入後、優勝チーム決定後のスタンドの変化といってもピンと来ない方もいるかもしれませんが、本当に、驚くほど大きな変化が生まれたのです。
まず、スタンドを埋めた観客のグラウンドへの集中力が格段に高まります。いつもの声援や応援に加え、選手の一挙手一投足に大きな拍手、歓声、ため息などの様々な反応が起き、球場全体を覆うのです。
私の経験で言うと、観客の緊張感と集中力、それに応援が合わさるという、ある種、異様な雰囲気に包まれるのは、日本シリーズだけでした。しかし、正直「シーズン中にここまで盛り上がるとは」と、CSが始まってからびっくりしたのを覚えています。
実際に実況していて、スタンドの声援の大きさに自分の声がきちんと出ているのかと不安になるくらいでした。中継スタッフには、収音マイクなど、あらゆるマイクの音を調整するミキサーさんがいます。スタンドに設置されたオーディエンスマイクの音量がとにかく大きくて、音量を調整するフェーダーというつまみの位置を、シーズン中の「このくらい」としていた位置よりも下げないと、音が割れてしまうという経験もしました。
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