「エスカレーターの片側空け」が無くならない問題…なぜか誰も「片側空け」で乗らない“超人気イベント”があった

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 10月1日、埼玉県で「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が施行されてからちょうど5年が経った。2021年に始まったこの条例では、利用者の義務として「立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない」と明記されている。

 エスカレーターの利用者の多くが、片側に立ち止まってもう片側を空け、急いでいる人が空いているほう駆け上がったりする状況がみられる。条例ではエスカレーターは立ち止まって利用することを基本とし、片側空けではなく、左右両側に立ち止まって利用することを呼びかけている。

 エスカレーターの片側空けは、1967年に大阪の阪急梅田駅で始まり、全国に広まったといわれる。急いでいる人への心遣いとして長年にわたって好意的に捉えられていた面もあったが、ラッシュ時には慢性的な混雑の原因になるうえ、エスカレーターを駆け上る人とぶつかったりして、トラブルの原因になることも多かった。

 そこで、埼玉県では、安全な利用を促進すべく条例制定に至ったわけである。県内の駅では一時期、条例の浸透を呼びかけるポスターが多数掲示されていたため、目にした人も多いだろう。しかし、施行から5年経ったものの、罰則などは特にないこともあってか、片側空けの状況が続いているとの意見も聞かれる。【取材・文=山内貴範】

JR武蔵野線の主要駅の定着ぶりは

 この記事の読者からは、「こんな条例、定着なんかしているわけないだろ」「条例があることを今知った」などの声が寄せられそうである。そのため、最初に結論を書いてしまうが、この条例は定着していない。調べるまでもないほど定着していない。しかし、念のためということで、埼玉県内の駅をいくつか巡って調査してみた。

 まずは、東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の新越谷駅に行ってみた。東武鉄道の主要なターミナル駅の一つで、JR武蔵野線の南越谷駅との乗換駅となっている。大方の予想通りかもしれないが、夕方のラッシュ時でどんなに混雑していても片側空けで乗車する人が多く、急いで駆けのぼる人がごく当たり前にみられた。

 JR武蔵野線の越谷レイクタウン駅は、日本最大級のショッピングモールである「越谷レイクタウン」の最寄り駅。埼玉県内はもちろん関東近郊から集客しており、さらに近くに学校も多いため平日も休日も利用者が多いが、駅からアクセスできる「イオンレイクタウンkaze」のエスカレーターも片側空けで乗っている人ばかりで、歩く人は普通にいた。

埼玉県内最大のターミナル駅はどうか

 JR東日本の埼玉県内最大のターミナルであり、通勤・通学電車をはじめ、東北や北陸など各方面へと向かう新幹線が発着し、東武野田線(アーバンパークライン)も乗り入れる大宮駅はどうか。案の定、やはりまったく定着していない。ほとんどのエスカレーターで片側が空いており、長時間調べるまでもなく空いた片側を駆け上る人を普通に見かけた。

 大宮駅は地方からやってくる新幹線の利用者が多いため、埼玉県のローカルな条例を知らない人も多いのかもしれない。とはいえ、ここまで定着していないのは驚きだ。エスカレーターは長蛇の列になってなかなか進まず、2列で乗ったほうが行列解消になるのでは……と思えるし、実際そうなのだろう。

 ところが、である。“勇気ある”誰かが空いた片側で立ち止まると、以降の人々は2列を成していくのだ。この光景もまた、あらゆる駅で見られた。いかに日本人が周りの目を気にしているのか、わかるだろう。誰もができることなら2列で立ち止まって利用したいのだが、「どけ!」などと注意されるのを怖がっているのが本音ではないだろうか。

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