「エスカレーターの片側空け」が無くならない問題…なぜか誰も「片側空け」で乗らない“超人気イベント”があった
定着したもの、しなかったもの
条例が制定されたのは、2020年から始まったコロナ騒動の最中である。この頃に普及したマスクの着用は条例でも法律でもなく、任意であり、“お願い”ベースであった。店から着用を求められるならまだしも、外では必ずしも着用しなくてもいいと厚生労働省は呼びかけていた。ところが、周りの目を気にする人が多数派だったためか、一気に定着した。
対する埼玉県のエスカレーターの条例は、まったく定着しなかったのが興味深い。もちろん、全国レベルの条例でなかったことも大きいのかもしれないし、コロナ時に流行した“ソーシャルディスタンス”の観点から人と距離を取りたかった人が多かったのかもしれないが、とにかく定着しなかった。
エスカレーターでは立ち止まってしっかり手すりにつかまらないと、転倒したり、落下したりして、大事故につながることもある。降りるときに衣類などが巻き込まれるリスクがある。駆け上がるとぶつかった人と口論になったりして、トラブルに発展することもあるのだ。こうした危険性が十分に周知されていないのも問題であろう。
条例には、「利用者に対し、立ち止まった状態でエスカレーターを利用すべきことを周知しなければならない」と明記されている。しかし、行われていることはアナウンスを流すくらいであり、おそらく利用者のほぼ大半が聞いていないのではないだろうか。
マナーが徹底されているのはあのイベント
さて、筆者がこれまで見てきた中で、エスカレーターの利用マナーが“完璧”なイベントがある。それは「コミックマーケット」である。参加者はエスカレーターを駆け上ったり、駆け下りたりせず、整然と並んでいる。これほど美しいエスカレーターの乗り方は、他では見たことがない。
コミックマーケットの場合はスタッフの呼びかけが行われているからこそ、こうなるのだと思う。だが、エスカレーターは駅によっては片側空けを禁じ、左右両側を利用するように呼びかけるアナウンスが流れていても、なかなか普及しない。一度定着してしまったものを変えるには相当時間がかかり、難しいものだと実感させられる。
今なお、“ごくごくわずかな時間の短縮”のためにエスカレーターを歩く人は後を絶たない。それをしたところで、ガラガラの階段を上るのと大して時間差は生まれないし、肉体的負担の軽減にはならないことを周知するべきであろう。そして、立ち止まって利用するのが当たり前になってほしいものである。





