8歳年上の人妻上司の腕に“大きなアザ”が…「彼女を守らなければ」 深夜の神社で“心中未遂”に至るまで

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「私はもう消えたい」

 夫の目をかすめて、たびたび会うようになった。同情が愛情に変わるのに時間はかからなかった。

「男女の関係になって、ますます彼女を守らなければと思うようになりました。でも彼女は夫から離れようとしない。警察に一緒に行こうと言ったけど、家族に迷惑がかかると頑なだった」

 それほど彼を恐れているのに、なぜか岳人さんと密会しているときに夫からの邪魔はなかった。半年ほどたったとき、彼女は涙ながらに「夫から毎日責められている。もう生きていたくない」とつぶやいた。

「だからオレのところに逃げてくればいい、オレはあなたの夫と闘うからと言いました。会社をクビになってもいい、あなたさえ守れればいいと。でも彼女はどんどん気持ちが落ち込んでいった。『私はもう消えたい』とまで言いだして。それなら一緒に死ぬよと言うしかなかった」

 坂を転げる雪だるまのように話はあっという間に大きくなった。彼は自分でもよくわからないうちに「死ぬしかない」と思いつめた。ただ、どうしたらうまく死ねるのかもわからなかった。

「彼女が『毒を手に入れた』と持ってきたんです。ふたりで、とある神社の境内で深夜にそれを酒とともに飲みました。でも数時間後、僕は目が覚めてしまった。彼女を揺り動かしたら目を覚まして……。救急車を呼ぼうとしましたが、彼女は大丈夫だと言っていました。なんだかふたりとも気が抜けてしまいまして」

翌週、彼女は姿を消した

 そのままそれぞれ帰ったという。翌週、出勤すると彼女は会社を辞めていた。連絡もとれない。社内では、「夫と無理心中を図ったらしい」という噂まで乱れ飛んだ。だが、人の噂も七十五日、いつしか誰も彼女の話をしなくなっていった。

「彼女が持ってきたのは毒なんかではなかった。おそらく弱い睡眠薬でしょう。死ぬつもりなんかなかったし、僕を死なせるつもりもなかった。何か気持ちを変えたかったのかもしれませんが、そのあたりはわからない。僕自身、気持ちの整理がつかずに悩みました」

 カウンセリングにかかりたかったが、心中未遂を話すのははばかられた。誰にも言わず、ひっそりと胸の奥にしまった。たまたま転職した先輩が誘ってくれたため、彼も転職、これまでの人生に別れを告げ、まったく違う人生を歩き出そうと心に決めた。

 ***

 心中未遂という壮絶な経験を経て、突然、姿を消した優美さん。岳人さんは過去を胸の奥にしまい、転職して新たな人生を歩き始めたのだが……。【記事後編】では、その後築いた岳人さんの家庭を揺るがすことになった出来事を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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