「美智子さま」「小渕元総理」まで魅了した「山本夏彦さん」名物コラムの神髄…週刊新潮は嫌いでも「夏彦の写真コラム」だけは読むというファンも

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 週刊新潮で熱狂的な人気があった長期連載に《夏彦の写真コラム》がある。コラムニスト・山本夏彦さん(1915~2002)の名文と一葉の写真を組み合わせた、グラビア企画である。

 1979(昭和54)年7月5日号より連載開始。2002(平成14)年10月24日号まで、途中、病気入院による休載を除いて1回も休むことなく、23年間「1151回」という、驚異的な回数を重ねた。年齢にして64歳から87歳まで。毎回、400字詰め用紙で2枚前後。100回ごとに単行本にまとめられ、のちに新潮文庫でも長く読まれた。

 その内容はまさに自由闊達。さまざまな世事、身辺雑記を題材に、辛辣、皮肉、ユーモア、諧謔、冷徹、愛憎、毒舌……本音の筆致が炸裂した。週刊新潮は嫌いだが、《夏彦の写真コラム》だけは読むというファンも多かった。

 本年は、山本夏彦さんが逝去されて、数えで25年となる。どういうコラムだったのか。どんな人気ぶりだったのか。当時を知るOBの回想を交えながら、振り返ってみよう。

伝説の第1回〈可哀想な美空ひばり〉

 そもそも山本夏彦さんとは、どういうひとなのか?

 1915(大正14)年、東京・根岸に生まれた。父は、詩人・山本露葉。少年期から厭世的で、何度か自殺未遂をこころみている(このことは、かなり後年になって明かされた)。16歳で、父の知人だった作家・翻訳家の武林無想庵に連れられて、フランスへ。パリのユニヴェルシテ・ウーヴリエール(共産党系の労働学校)に学ぶ。帰国後は、翻訳や出版社勤務を経て、インテリア専門誌「木工界」(のちに「室内」と改題)を創刊。同誌で連載したコラム「日常茶飯事」が話題となり、コラムニストとしても活躍するようになる。

《夏彦の写真コラム》がはじまったのは1979年だが、週刊新潮は、それ以前から夏彦さんに“興味津々”だった。

 夏彦さんの没後、長男・山本伊吾さん(「週刊新潮」デスク→「FOCUS」編集長→「室内」編集・発行人)が、遺された手帳をもとに綴った評伝風エッセイ『夏彦の影法師 手帳50冊の置土産』(2003年、新潮社刊)のなかに、こんな記述がある。1972年の項だ。

〈7月17日 週刊新潮ホストの件、断る。

 7月19日 週刊新潮山田彦彌氏来る。1・5時~5・5時再び断る。

 連載対談を企画した「週刊新潮」が、ホスト役として山本夏彦に白羽の矢を立てた時のメモだ。〉

〈山田彦彌氏〉とは、のちの週刊新潮第三代編集長である。おそらく、このあとも交渉を続けたと思われる。実は「写真コラム」は、夏彦さんが主宰する雑誌「室内」での連載企画だった。それを、週刊新潮に“移籍”するような形で、7年後、《夏彦の写真コラム》の連載がスタートする。

 その第1回〈可哀想なひばり〉は、いまや伝説となった名コラムである(単行本収録で〈可哀想な美空ひばり〉と改題)。

〈美空ひばりは、最後の日本人のような気がする。なぜならひばりは親孝行である。孝行は以前は「徳」だったが、今は徳ではない。いまどき孝行であるには、勇気に似たものが要る。/その上ひばりは兄弟思いである。孝行のほうはまだ全く滅びはしないけれど、兄弟思いのほうは滅びた。〉(1979年7月5日号)

「この書き出しには、ちょっと驚きました」と、当時を知る週刊新潮OB氏が回想する。

「このころ、“女王”美空ひばりの実弟が暴力団がらみの事件を起こしていたほか、本人も暴力団との関係を指摘され、各地で公演キャンセルとなっていました。長年トリをつとめていたNHK紅白歌合戦も辞退。そのひばりを、あの時期に〈可哀想〉〈親孝行〉と称賛することは、ほぼタブーだったのです。しかし実は、誰もが心の底で、夏彦さんとおなじことを思っていたのでした。このコラム第1回は、そんな当時の日本人の気持ちを代弁してくれており、読者は溜飲を下げたのです」

 長男・伊吾さんも『夏彦の影法師』で、こう述懐している。1979年の項。

〈6月26日 週刊新潮「夏彦の写真コラム」第1回持参。

 以後、このコラムは、父が亡くなるまで、23年にわたって連載されたが、その第1回目。タイトルは、「可哀想な美空ひばり」。

 7月2日 ひばり評電話しきり。ほめる。

 1151編の「夏彦の写真コラム」の中でも、この最初の一編は、私も傑作だと思う。

(ここでコラム全編を再録)

 23年間の連載を休んだのは、胃の全摘手術後の数回だけ。そして、どんなに忙しくても、どんなに具合が悪くても、父は決して手を抜くことをしなかった。毎週の原稿なのに、辛いというより、むしろ楽しそうに書いていた。〉

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