「美智子さま」「小渕元総理」まで魅了した「山本夏彦さん」名物コラムの神髄…週刊新潮は嫌いでも「夏彦の写真コラム」だけは読むというファンも
〈妃殿下より電、嬉し〉
「実は連載中、夏彦さんの講演会を開いてほしい、ナマで話を聞いてみたいとの読者の要望が絶えませんでした」(OB氏)
だが夏彦さんは「講演会」は、やる気ゼロ。その代替として、1999年7月、連載1000回を記念して、飯田橋のホテルエドモント(当時の名称)で茶話会が開催された。OB氏は、その運営手伝いに参加した。
「昼間、お茶とお菓子をいただきながら、壇上の夏彦さんとゲストが気軽なおしゃべりをするのを楽しもうという会費制のティー・パーティーです。定員は200人ですが、《週刊新潮掲示板》で呼びかけたら、千枚前後のハガキが来ました。さらに困ったのは、“抽選に外れたが、なんとか入れてくれないか”と言ってくる知り合いが、あとを絶たなかったことです。そのほとんどが中高年の女性でした」
ゲストには、泉ピン子さん、阿川佐和子さんといった熱狂的な夏彦ファンが詰めかけたが、なぜか当日、ホテル内と周辺には、SPらしき屈強な黒服がゾロゾロ並んでいた。
夏彦さんの愛読者には著名人も多いが、その最たる存在が、美智子さま(現・上皇后)であった。前記『夏彦の影法師』の手帳には、しばしば〈妃殿下より電、「室内」毎号読んでくれている由〉〈妃殿下より電、嬉し〉とった記述が登場する。昭和40年ころに、ある文化人の会でご一緒になり、以後、愛読者になられたそうである。
「なんとなくそのことは聞いていたので、SPの姿を見たときは、もしや美智子さまが来場されるのでは……と、スタッフたちが緊張したのをおぼえています」(OB氏)
だが、さすがに美智子さまではなく、来場したのは時の総理大臣・小渕恵三氏であった。
「小渕首相は、とにかく“夏彦中毒患者”だそうで、直接会えてうれしくて仕方ないといった様子でした」
ところで、この《夏彦の写真コラム》が、ラジオでも放送されていたのをご存じだろうか。『夏彦の影法師』のなかで、長男・伊吾さんが書いている。1996年の項だ。
〈この頃、父の頭の中に浮かんでいた企画がある。「夏彦の写真コラム」があるなら「夏彦のラジオコラム」はどうだろう。〉
その時点で16年分800回余のストックがあった。このなかから選んで、1回正味3分で朗読し、CMを入れて5分の番組にする。月曜から金曜まで毎日放送し、まる1年で終わる。これが、同年4月から、ラジオ日本で毎朝9時15分に放送された『夏彦のラジオコラム』である。提供は東京電力。ナレーターは、ロバート・ヴォーンの吹き替えでおなじみ、ベテラン声優の矢島正明氏。
「この矢島さんの朗読があまりに素晴らしく、放送だけで終わらせるのはもったいないと、ベストセレクションを新潮カセットブック3巻に再構成して商品化することになりました」(OB氏)
OB氏は、このカセットブックの担当となり、あるとき夏彦さんのもとへ打ち合わせに出かけた。
「その際、夏彦さんに、“東京電力がスポンサーとは、すごい番組ですね”と言ったら、平然と、“平岩外四さんに頼んだんですよ”と言われるじゃないですか。聞けば、夏彦さんご自身で、東京電力に企画を持ちかけて実現させたというのです」
『夏彦の影法師』に引用された手帳の記述に、こうある――〈2月23日 東電・平岩外四氏へ手紙〉。
なんと、東京電力会長・経団連会長である超大物、平岩外四氏に、直接手紙をおくって、番組スポンサーへ協力を呼びかけていたのだ(その手紙全文も『夏彦の影法師』に収録されている)。もちろん平岩会長は夏彦さんの愛読者だった。
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