「美智子さま」「小渕元総理」まで魅了した「山本夏彦さん」名物コラムの神髄…週刊新潮は嫌いでも「夏彦の写真コラム」だけは読むというファンも
コラム史上にのこる“結びの一文”〈玉三郎もよく聞けよ〉
なにしろ「1151編」もあるので、絞るのも難しいのだが、先のOB氏に、記憶に残っている名編をあげてもらった。まず、〈核兵器はなくせない〉である。
〈「核兵器はなくせない」と高校生の半分近くが思っていると読売新聞9月14日号は報じた。(略)私は出来てしまったものは出来ない昔に返れないと思っている。/(略)いいとか悪いとかいうなら、原水爆も核兵器もテレビも悪いにきまっている。けれどもひとたび出来てしまったものは、出来ない昔にもどれないのである。(略)テレビもカーも核兵器をつくる同じ精神の所産である。てっぺんに核兵器があるとすれば末端にテレビやカーがある、末端を享楽しててっぺんのだけ許すまじといったって、そうは問屋がおろさないことを高校生は頭でなく肌で知っているのだろう。〉(1988年10月2日号)
「夏彦さんには、この論法のコラムがいくつかあり、たとえば、“いまさら電話や新幹線のなかった昔には返れない”と論じた回もありました。もしいま、夏彦さんがご存命だったら、子供にスマホを禁じたり、AIの出現に困惑したりしている人たちを見て、“なかった昔には返れないんですよ”と笑っているような気がします」(OB氏)
もう1編あげてくれたのは、〈役者のくせに勝手に太る〉。夏彦さんは、歌舞伎役者総出演のある公演を見物に行った。すると、
〈歌右衛門ひとりを除いて、あとは太りすぎである、梅幸の静のごときはウェストもバストもヒップもない、「俵はごーろごろ」である。役者があんなに太っていいものだろうか。(略)わが国の役者が体重に無関心なのは、戦前まで日本人はあまり太らなかったからである。あの十五代目羽左衛門は、いつ見ても同じ程度にやせていた。(略)こないだテレビのCFのなかで江守徹を見て、その太ったのに驚いた。気味がわるい。(略)役者は太ってもやせてもいけない。契約違反である、それは興行主との契約ではなく見物人との契約で、見物が贔屓にしたのは中肉中背の江守徹である。/江守ばかりではない、玉三郎もよく聞けよ。〉(1980年7月10日号)
「この結びの〈玉三郎もよく聞けよ〉が強烈で、忘れられません。《写真コラム》のラストは、どれも名文ですが、これはまさにコラム史上にのこる“結びの一文”だと思います。それに、江守徹サンは当時すでに新劇界の重鎮でした。それだけに、よくこんな厳しいことを平気でズバリ言う、すごいコラムだとビックリした記憶があります」
このOB氏はほかに、〈汚職で国は滅びない〉〈生きているしるし年賀状〉〈恐るべきは正義である〉〈ネーミングが全てである〉〈このけがらわしい言葉「ロマン」〉〈出すぎやしないか本と雑誌〉などのタイトルをスラスラとあげてくれた。たしかにどれも、読まずとも中身が浮かんでくるような名タイトルである。
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