世界的な名声を獲得したパリではなく…生誕140周年で「ニューヨークの藤田嗣治」を一部“再現” 人気作品「猫の教室」の“秘密”とは
“乳白色”以前の裸婦
あるとき、フジタは「シャーマン・ルーム」のために、キャンバスを張った二曲一隻の屏風を作った。植物の緑の葉に囲まれた裸婦である。屏風と一緒にシャーマンが写っている写真が残っている。それが、現在、2枚に分割され、ポーラ美術館が所蔵する《植物のなかの裸婦》である。
今回、この2枚も展示されている。戦後、乳白色で描く以前の、赤味の強い肌色の裸婦である。周囲に描かれた植物は、シャーマンが新宿御苑の温室でもらってきた熱帯植物をモデルにしたという。
シャーマンは、フジタが渡米できるよう、ついにアメリカ政府からの招待状を入手してくれた。君代夫人はあとから渡米することになり、とりあえずフジタは、1949(昭和24)年3月10日、羽田空港(当時の国際空港)から飛び立った。
さて――そんな企画展が開催されている〈軽井沢安東美術館〉は、軽井沢駅から徒歩10分ほど、〈軽井沢大賀ホール〉の斜め向かいにある。世界初、“藤田嗣治作品だけを展示する、自宅のような美術館”がコンセプトの私設ミュージアムだ。投資ファンド会社を経営する安東泰志氏の蒐集作品を中心に展示構成されている。2022年10月オープンの、まだ新しい瀟洒な美術館だが、ゆったりした展示スペースで、フジタ・ファンを楽しませてくれている。
原則として企画展は年2回。会期は半年間と長いので、余裕をもって予定を立てることができる。そのほか、常設展スペースでは、フジタの初期から晩年までの作品が展示されている。
ミュージアム・ショップでは、ここでしか手に入らない“フジタ・グッズ”が多く販売されている。館内にはレストランも併設されており、夜までゆったりと過ごすことができる(昼間はカフェ営業。美術館は17時まで)。
旧軽井沢銀座やアウトレットモールなど、人気スポットをまわるのもよいが、小さな美術館でゆったりとフジタを鑑賞しながら、76年前のニューヨークでの個展に思いをはせる、そんな夏休みの1日は、いかがだろうか。
※来館の際は、開館日程・時間などを公式サイトで確認してください。レストランは原則(月)(火)(水)が休業です。
【参考資料】
『藤田嗣治 再生と挑戦のニューヨーク』軽井沢安東美術館・編(世界文化社)
『なぜ日本はフジタを捨てたのか? 藤田嗣治とフランク・シャーマン1945~1949』富田芳和(静人舎)




