昭和のミステリー「無尽蔵事件」で浮上した「ワゴン車から滴る腐敗汁」の正体…骨董店主の失踪に“男性従業員”は関与したのか
有力容疑者が使用している車から黒い腐敗汁が……行方不明になっている人物はもしかしてその中に――昭和57年2月に起きた東京・南池袋にある骨董店主の行方不明事件を極秘裏に捜査していた警視庁捜査第一課・殺人犯捜査9係の捜査員たちは、同店の従業員の男への嫌疑を強める。すぐに事情聴取を開始するのだが……。(全3回の第2回)
【写真で見る】被疑者と犯人の関係、遺体のない殺人事件…ミステリアスな事件の登場人物
「ああ、あれですか」
田宮榮一・捜査第一課長指揮のもと、骨董店「無尽蔵」の従業員Z(30)への事情聴取が始まった。昭和57年2月から行方が分からなくなっている店主Yさん(56)について、行方不明届を池袋署に出したのも、このZである。
聴取に対し、Zは平然とした態度だった。車から滴り落ちている黒い腐敗汁について聞くと、大笑いしながら「ああ、あれですか」と言いながら、捜査員にとって予想もしなかった、骨董品の偽物をつくるからくりを話し始めた。
〈安物の焼き物を硫酸で焼いてから、魚肉や野菜の腐敗汁の中にしばらく漬けておくと、土中から発掘された古物のような観を呈するようになるという。車の中のボックスには、腐敗汁に漬け込んだ壺や花瓶などが入っているとのことだった〉(田宮榮一著『警視庁捜査一課長 特捜本部事件簿』角川書店より)
ボックスの中身を検分したところ、Zの供述通りだった。しかし、偽物づくりは良くないことではある。困惑する殺人犯捜査9係の捜査員に、
「それを本物の骨董品と信じて買い求める人は、その人なりの趣向に合ったのでしょうから、それはそれでいいんじゃないですか」
Zは悪びれることもなく、そう語った。
一方で、Zに対するさらなる身辺捜査も進められていた。ZがYさんと知り合ったのは、都内にある大学に通っていた4年生当時の昭和51年ごろだった。
〈学生時代には全日本の代表選手に選ばれるほどのラガーマンで、見るからに強靭で敏捷そうな体つきをしていた。
母親が病気入院中なので、その医療費に窮していた彼は、新宿二丁目のゲイバーでアルバイト店員として働いていた〉(同)
その店によく来ていたのがYさんだった。やがてZはYさんの運転手として、その後は骨董店で働くようになり、大学も中退し、同居もするようになったのだった。
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