17年ぶりに再会した元カノは、息子に僕の名前を付けていた。家族ぐるみの付き合いが始まった2つの家庭の行方は
17年ぶりの再会
だからマンションの下見でばったり会ったとき、彼は意外と驚いていない自分を発見していた。いつかは会えると思っていたのかもしれない。そして真未さんもまた、意外なほど冷静に見えた。
「真未もひとりで来ていたんですよ。お互い、不動産屋と別れてからそれとなく同じ方向に歩き始めました。とある喫茶店の前で振り返ると彼女が頷いていた。自然と喫茶店で向き合いました。17年ぶりくらいだったんですかね。真未は昔のように、じっと僕を見ていました。久しぶりねでも何でもなく、第一声は『あのころに戻れたらいいのに』だった。僕も同じ気持ちでした。『今でも私のために死ねる?』と急に言われて面食らったけど、平穏な生活が長く続いていたので、彼女の言葉がグサグサ突き刺さってきて、あのころの熱く濃い思いが胸の奥から逆流してくるような気がしました」
真未さんは「嘘よ」と笑った。彼女は年下の男性と結婚し、今度、小学校に入る息子がいると言った。うちと同じだよと仁史さんが言うと、「うちの子、ヒトシっていう名前なの」とつぶやいた。「そう、あなたの名前をもらったの」と。
仁史さんはそのマンションを購入した。引っ越したその日、真未さんもまた、そこへ引っ越してきたことがわかった。すでに共犯関係はできあがりつつあった。
家族ぐるみの距離
「真未と連絡を取り合いました。まったくの他人として過ごすとかえって不自然だから、しばらくたったところでばったり会ったことにしよう、同じ大学だったことだけをパートナーに話そうと口裏を合わせたんです」
仁史さんの妻の美雪さんは、すぐに真未さんと仲よくなった。真未さんはファッション関係の仕事を主に在宅でしていたため、仁史さんたちの子どもを積極的に預かってくれた。
「美雪はすっかり真未に興味津々で、『ものすごく魅力的な人よね。大学時代からあんな感じだったの?』『ミステリアスなところもある』などいろいろ言っていました。僕はクラスで会えば話す程度の関係だったからと適当に濁していた。真未の夫という人がまた、いい人なんですよ。家族ぐるみのつきあいをするようになりました」
お互いに“家族ぐるみ”でいいという思いもあったし、そのほうがいいという理性もあった。ところがやはり、あの頃の熱は冷めてはいなかった。
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