マイホームの下見中に“忘れられない元カノ”とバッタリ遭遇…49歳夫が封印していた「死に物狂いの恋」

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中古マンションの下見で

 だからといってのんびりしてばかりはいられなかった。まじめに仕事をしてきた仁史さんは、本人に出世の意欲があるかどうかは別として、会社からは重宝されていたし期待もされていたのだ。30代になって、彼自身が仕事をおもしろく感じてきたこともあった。

「仕事も多忙で家庭も多忙。でもそんな生活も楽しんでいました。美雪は相変わらずマイペースで仕事をしていたけど、年齢に応じて徐々に責任は重くなっていったようです」

 息子が小学校に入るのを機に、ふたりは家を買おうと相談した。あちこち見て歩き、自分たちに見合う中古マンションが見つかった。中古とはいえ頑丈な造りだったし、内装を変えれば「自分たちの城」になると、仁史さんは前のめりになった。

「もう決めてはいたけど、どうしても内装の件で確認したいことがあって、僕がひとりで不動産屋さんと待ち合わせして見にいったんです。そのとき、もう一軒、急に空き部屋が出たと聞いて、ついでだからちょっとそこも見せてということになった。でも先約がいたので、廊下で待っていたら、中から出てきたのが……」

 仁史さんは急に言葉を切り、少し間を開けて「真未だったんです」とつぶやいた。

 真未さんは独身時代の彼の恋人で、3年つきあったのだという。

死に物狂いで愛した女性

「元カノに会うなんて、まあ、稀にはある話ですよね。だけど、僕と真未とは元カノなんて気軽に言えるような関係ではなかった。死に物狂いで愛した女性だったんです。彼女のためなら本気で死んでもいいと思っていた」

 真未さんとの出会いは大学2年のころだった。同じクラスで、選択している講義も似通っていたが、彼女はいつも暗い表情でひとり歩いていた。仁史さんは彼女の存在が気になってたまらなかった。明るい顔が行き交うキャンパスで、黒ずくめの服を着て俯き加減の彼女は異質な存在だったからだ。

「あるとき、彼女の隣に座って、『僕ら、ほとんど選択している講義が同じなんじゃない?』と聞いてみたんです。すると彼女はじっと僕を見て『何か用?』と。用がないと話しかけちゃいけないの、ここは大学だよと笑ったんですが、彼女は乗ってこない。これから講義が始まるというのに『私なんかと関わらないほうがいいわよ』と立ち上がって出て行ってしまったんです。あっけにとられました」

 近くにいたクラスメイトが、「変わってるのよ、彼女」と言った。聞いてみると、いろいろな噂があるらしい。親が反社だとか、彼女自身がとんでもない不良だったとか、はたまた有名な芸術家の愛人だとか。根も葉もない噂かもしれないが、どれも彼女の雰囲気を考えると当たらずとも遠からずという気がした。それ以降、彼はますます彼女が気になった。

「しばらくたってまた会ったとき、『久しぶり』と声をかけたら、彼女は黙ってうなずいたんです。前より対応が進化してるねと言ったら、ほんのちょっと口角を上げて笑ったっぽかった。『どうしてもあなたのことが気になって眠れないんだ。お茶してくれない?』と言ったら、彼女はまた黙ってうなずいた。講義が終わると彼女は、僕を目で呼んで、大学の前からタクシーに乗ったんですよ。僕は田舎育ちで大学生になって初めて東京に出てきて、都内でタクシーなんて乗ったことないからびっくりしました」

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