高級レストランのペアディナー券や癒しのエステ券、定番の高級食材まで なぜ高市総理はカタログギフトを繰り返し使うのか

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カタログギフトは高市総理の十八番だった

 高市早苗総理が自民党所属の衆議院議員に1人あたり3万円分のカタログギフトを配ったことが国会で問題視されている。総勢315名向けの「当選祝い」の総額は945万円。

 総理いわく、「労い」と「政治活動に役立つ」ための選択肢には、高級レストランのペアディナー券や癒しのエステ券、ビジネスバッグから調理器具・家電、すき焼き肉にふぐ刺し、フルーツといった高級食材等の逸品が目白押し。

「選挙後、全議員に当選祝いを配布したという気前のいい総理・総裁は聞いたことがない」と自民党関係者は皮肉交じりに語るが、なにも高市総理による「カタログギフト」の配布は、今回が初めてのことではない。「人付き合いが下手」「後輩の面倒をみない」と政治活動の手法を非難されてきた高市総理は、過去にもことあるごとにカタログギフトによる「御礼」や「返礼」を自民党の国会議員に贈っていたという。公開済の自由民主党奈良県第2選挙区支部(代表 高市早苗)の収支報告書には、政治活動費の内訳として、今回と同じく近鉄百貨店や三越伊勢丹で購入した「返礼品」が多数計上されている。

「総理とのカレーランチ」

「数回に分けて夕食会を開催して欲しいとの要望もありましたが、(中略)それも困難でしたので、ささやかな品に致しました。」(高市総理のXより)

 カタログギフトは公務で忙しいため開催できない懇談の代替品らしい。『告発 裏金 自民党を壊した男たち』(桐山煌・著)には、次のような一節がある。

《見栄えの良い理想論や難しい法律用語を口にしているだけでは人は集まらない。2024年の総裁選挙で石破茂に敗れた高市早苗に対し、麻生太郎は「議員は仲間作りが大事。これから半年は飲みに行け」と党内戦争を勝ち抜くための方策を指南したというし、「ミスター会食」こと二階俊博は、敵と味方を見極めるために「飯を食え」と説く。》

 麻生氏に指南された高市氏が会食の代わりに多用したのがカタログギフトだという。政調会長時代にも党内の議員に配布されているし、過去に出馬した総裁選後にも配布されていた、と自民党関係者は振り返る。会食を通じた人間関係の構築を重要視する永田町において、総裁選支援への御礼を示唆するカタログギフトの配布に困惑する者も多かったというが、2月の総選挙で圧勝した高市総理はそうした自身のふるまいにも「信任」を得たと思ったのか、自民党の全衆議院議員への配布を実弟である議員会館勤務の秘書に指示したようだ。

 日々の首相動静からも明らかなように、歴代の総理官邸ではしばしば当選回数別に自民党議員が招かれ、昼食をともにしながら総理との懇談が開催されてきた。「総理とのカレーランチ」などと呼ばれる。長期政権を築いた安倍晋三をはじめ歴代総理は、それに加えて夜の会食も一日に複数はしごすることがざらだった。また、安倍総理は日課として、秘書官や官房長官、副長官らと昼食を共にしながら、情報共有と意見交換を行っていたという。そういった日々の積み重ねは複数の省庁から集まった秘書官たちの結束力を高めることにも役立ち、強固な官邸組織「チーム安倍」につながった。そのように、同じ釜の飯を食うことの効用は昔から言われているが、永田町では食事をともにすること自体が目的化するきらいもあった。

 いっぽう、高市官邸では、小食の総理は栄養ゼリーなどを執務室で飲むことで昼食を済ませてしまうため、そういったランチミーティングの機会もほぼ見られないという。

 それに、何を隠そう、高市総理自身が通販などのカタログによる買い物が好きなのだという。夕食会代わりの3万円カタログギフトはさぞかし皆が喜んでくれると思っての計らいでもあるのだろう。

就任祝い、出張の土産、バレンタイン・デー……

 そもそも、ことあるごとに贈り、あるいは贈られる「贈り物文化」は永田町に昔からあるようだ。『告発 裏金』には、次のような記述がある。

《議員会館内では、「季節の贈り物」と称して、事務所同士で地元の名産を贈り合う習慣がある。世間でいうお中元、お歳暮みたいなものだ。選挙区でのそのような贈答品のやりとりは公職選挙法上禁止されているが、自身の選挙区で購入したものを選挙区外の議員同士で送り合うことは問題ない。集票活動の一環として支援者でもある地元の業者から購入したものを、東京で配る議員がいても問題はない。議員会館では、地元選挙区の誇る旬の農産物や銘酒や銘菓といった逸品を、先輩や同僚議員などの事務所に台車を使って届ける秘書の姿もしばしば見受けられる。》

 その贈り物文化は、先輩・後輩議員の誕生日、閣僚などへの就任祝い、海外出張のお土産、さらにはバレンタイン・デー、そのお返しのホワイト・デーなど様々な機会を通じて根付いているという。

 先の高市総理の政党支部の収支報告書では、毎年2月に地元奈良の老舗醤油屋での購入歴が記載されているが、総理もバレンタイン用に、自身の似顔絵を添えて「法隆寺醤油」を配っていたというし、小泉進次郎防衛大臣も同僚議員の部屋を訪問する際には、地元横須賀の「海軍カレー柿ピー」などを日頃から持参しているという。

「勝ったからええやん」

 カタログギフト問題は、24年の総選挙後、石破総理(当時)が初当選議員15人に10万円の商品券を配布し批判を受けた経緯も相まって、再び「政治とカネ」問題への国会議員の意識を問う事態となった。国会の代表質問で問われた高市総理は「法令上問題ない」と答弁した。これまで日本人の道徳心や矜持の涵養を訴えてきた人物の答弁として「法律に反していないから問題ない」というのは違和感があるが、それを置いても、問われているのは、法的責任だろうか。たとえ、違法行為でなくとも、政治家の立場において「それは適切だったか」という視点は常につきまとう。自らが法を制定する立法府の一員たる国会議員が法令を遵守するのは当然であり、彼らに課される「政治的責任」と「説明責任」こそが民主主義の根幹をなすものだからだ。しかも、カタログギフト代を支出したという政党支部には国民の税金が原資である政党助成金が交付されており、総理の説明とは矛盾する。

 高い支持率を維持する高市内閣ではあるが、個別のインタビューや与野党の論戦を避ける高市総理の姿勢への批判も根強い。

 選挙での圧倒的勝利後、「勝ったからええやん」と述べ、強硬な姿勢が見られるとも伝えられる高市総理に求められているのは、会食を通じたコミュニケーションではなく、あるいは自身のSNSによる一方的な発信でもなく、国民とのコミュニケーションであるはずだ。その答えは、カタログギフトの冊子にはもちろんないが、総理が国民と誠実に向き合い、語りかける機会は様々に用意できるはずだ。

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