「貧乏ゆすり」はした方がいい? 推定患者最大で500万人超の「股関節痛」 日常生活でやってはいけないコトとは

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貧乏ゆすりは股関節痛対策に有効

 ところで、今お話ししている「jiggling(ジグリング)」とは関節を小刻みに動かすことで、日本語訳は「貧乏ゆすり」。実は、椅子に座り、かかとを上下に小刻みに動かす「ジグリング」が、関節の動きをよくする「滑液」の循環を促し、軟骨に栄養を補給する働きがあると研究で実証されており、変形性股関節症の運動療法として日本整形外科学会のガイドラインでも推奨されているのです。

 ただそれだけでは、筋膜ラインや筋肉群への効果があまり期待できませんから、それに前後左右上下の動きを含む立体的な運動をプラスし、「3Dジグリング」と名付けました。人前では行儀がよくないとされる貧乏ゆすりですが、股関節痛対策としては大いに活用してください。

 いつでもどこでもできる体操ですが、難点は、継続しないと効果を得られにくいこと。私は患者さんに「最低でも3カ月は続けてください」と伝えています。「朝起きたらまず体操」「歯磨き中に体操」「テレビのCM時に体操」などと決めて、日々の習慣に組み込んでしまうと継続しやすいかもしれません。ただし、症状が重く、3Dジグリングで痛みが悪化するような場合は、無理に続けず、主治医に相談してください。

お勧めの靴のタイプ

 股関節痛対策には、股関節に負担をかける生活動作をできる限り避けることも欠かせません。「床に座る」「和式トイレでしゃがむ」「しゃがんでモノを取る」「布団の上げ下ろしをする」「正座をする・あぐらをかく」「片足重心で立つ」「足を組む」「急激に体をひねる」などは、いずれも股関節に負担をかけます。股関節痛のことを考えると、日本式の生活よりも、椅子やベッドを使う洋式の方がお勧めです。

 股関節に負担をかける、よくある生活習慣としては、「買い物で重い荷物を持つ」「肩に重い荷物をかける」「満員電車で踏ん張る」「犬を連れて散歩する」。全部をなくすことは難しくても、一つ一つ減らしていけば、股関節をいたわることにつながります。

 いつも身近に置いておくと便利なのが、柄の長いマジックハンド、もしくは挟む部分が広い火ばさみ。床に落ちたものを持ち上げるときも、深くしゃがまずに済みます。火ばさみは、先端部分に布テープを巻いておくと安全です。靴下を履くときは、椅子に座った状態で靴下を履けるソックスエイド(前かがみになれない人をサポートする自助具)を利用するといいですよ。

 靴は、歩行時のクッション性が高いソールのものを。足の甲の周りに余裕があるものがよく、股関節痛でかがむのが大変な人は、マジックテープで留めるタイプのものが履きやすいです。

 スポーツに関しては、やり過ぎると股関節に負担がかかり、やらな過ぎると筋力が落ちてやはり股関節に負担がかかります。股関節痛があるうちは水中ウォークや軽いウォーキングにとどめ、股関節痛を克服したら好きなスポーツを、ちょうどいい範囲で行うようにしてください。違和感や痛みを感じる強度は論外、やった後に「股関節の辺りが重くなる/動かしづらくなる」場合は、強度を下げましょう。

 変形性股関節症は、手術が大きな効果をもたらす病気でもあります。人工股関節に置き換える人工股関節全置換術を受けると、「どちらの足の股関節が痛かったか思い出せない」という声も上がるほど、痛みが消えます。しかし手術の前にやれることはたくさんある。ぜひ、日々体重の何倍もの重さに耐え、必死に頑張っている股関節をいたわり、ケアしてあげてほしいのです。

高平尚伸(たかひらなおのぶ)
北里大学大学院医療系研究科整形外科学/スポーツ医学/リハビリテーション科学教授。股関節痛におけるセルフケアの重要性の啓発に力を入れるとともに、患者自身が簡単にできる運動療法の指導にも当たる。日本股関節学会理事、日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会認定医。

週刊新潮 2026年1月29日号掲載

特別読物「推定患者数は最大500万人超 股関節痛に効く『究極の体操』」より

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