黙秘権が多用され、加害者は“黙り得”という現実 名古屋主婦殺害、被害者の夫が憤慨 「遺族をさらに傷つけるつもりか」

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「獄中死を見届けてから死にたい」

 全国被害者支援ネットワークの理事長で中央大学名誉教授の椎橋隆幸氏は、日本の司法制度において被害者や遺族はかつて知る権利が十分に認められず、「忘れられた存在だった」と振り返り、こう解説した。

「動機や加害者の状況も含めて遺族は事件の真相を知りたいと願っている。その知る権利は近年の法改正によって徐々に拡大されてきた。被害者や遺族が傍聴席からでしか裁判を傍聴できない時代に比べると、今は被害者参加制度により意見を陳述したり、被告人にも質問できるようになった。ところが今回の事件のように取り調べ段階から黙秘権を行使されてしまうと、遺族が知りたいことが閉ざされてしまう。被疑者に認められた権利であるがゆえ、不適切とまではいえないが、個人的にはその戦術はいかがなものかと思う」

 高羽さんが語気を強める。

「安福が裁判で仮に、自分にとって都合の良い話をしてきたら、事実ではないと否定するだけです。あなたには一切興味がなかったし、関わりを持たずに生きてきた。それが私の人生です、と言ってやります。今はもうこんな年齢ですが、自分が少しでも長生きし、彼女の獄中死を見届けてから死にたいです」

 憲法には、黙秘権以外にも被告人や被疑者を保護する権利がいくつも明記されている。しかし、被害者に関する権利は一つも書かれていない。

「なぜ加害者の権利が優先されるのか」

 高羽さんの言葉が重く突き刺さる。

水谷竹秀(みずたにたけひで)
ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒業。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)などの著書がある。10年超のフィリピン滞在歴を基に「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材を続けている。

週刊新潮 2026年1月29日号掲載

特別読物「名古屋主婦殺害 安福久美子の自己保身に遺族が憤激 真相解明を阻む『黙秘権』という壁」より

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