黙秘権が多用され、加害者は“黙り得”という現実 名古屋主婦殺害、被害者の夫が憤慨 「遺族をさらに傷つけるつもりか」
弁護士の多くは「国家は敵」だという思想の下……
犯罪被害者支援に長年携わっている高橋正人弁護士は、「一般論として」と前置きした上で、こう語る。
「取り調べ段階で被疑者が黙秘に転じるケースは、弁護士の介入による可能性が高いと思われます。被疑者が突如として自発的に行使することは考えにくい。刑事弁護を担当する弁護士の多くはいまだに『国家は敵』だという思想の下、被疑者や被告人の人権を盾に黙秘権を行使させる人もいます。だから被害者の被害回復の権利にはあまり関心がないのです」
実際、捜査関係者によれば、名古屋に事務所を構える弁護士らが安福容疑者を“支援”しているという。その弁護士に、安福容疑者に黙秘へ転ずるよう促したのか尋ねたところ、「個別の取材はお断りしている」と答えるだけだった。
「黙り得」
弁護士が黙秘を指示する意図について、高橋弁護士は引き続き一般論としてこう説明する。
「量刑を軽くすることを狙い、公判で被告に『物語』を語らせるためとみられます。被告は自分にとって都合の良いように脚色した話を展開し、自身の罪を矮小化する動機を供述する傾向がある。実際、それで裁判官や裁判員の理解が得られ、量刑が軽くなったケースもあります」
なぜそんな「黙り得」がまかり通るのか。それには2009年から導入された裁判員裁判が関係している、と高橋弁護士は指摘する。
「弁護人は、被疑者が一時的に取り調べに応じていたとしてもその後に黙秘権を行使させ、公判前整理手続で警察や検察による供述調書に不同意の意見を述べることが少なくありません。結果、裁判の証拠としては原則として採用されなくなる。これで『公判前の被疑者の供述』が十分に検討されなくなります。そうすると量刑の判断材料は、法廷で語ったことがクローズアップされる。だから裁判員裁判の導入以降、取り調べ段階で弁護士が介入し、黙秘権が多用されるようになったという側面は否定できません」
公判前整理手続は、裁判員裁判の対象となっている殺人や強盗致死傷などの凶悪事件を中心に、公判期日前に裁判官、検察官、弁護人が集まり、事件の争点や証拠を整理する準備手続きのことだ。そこで供述調書が“お蔵入り”となれば、被告人は、公判で「同情すべき加害者」を演じ切ることで刑を軽減され得るという理屈である。
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