足指の「つかむ力」と健康長寿の知られざる関係 衰えている場合の調べ方は?
靴下を履く際に見るぐらいで普段はほとんど意識しないのが足指である。ところが、その足指の「つかむ力」が健康長寿と深い関係にあることをご存じだろうか。2000人を調べてきた畿央大学の瓜谷(うりたに)大輔教授が自分で「足指力」を測る方法と鍛え方を解説する。
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最近、歩いていて誰かに簡単に追い抜かれてしまったり、以前は気にならなかった段差につまずくことが増えた経験はないだろうか。実はそれ、足指の力(足指力〈そくしりょく〉)が弱っているからかもしれない。
人は加齢によって、筋力など身体能力が弱ってくる。さらに衰えが進むと「フレイル」(虚弱)という状態になりやすいことが知られている。特に足腰が弱るフレイルは、歩行困難になるリスクが高いが、最近になって注目されるのが、転倒との関係だ。
例えば、東京消防庁によると、転倒したり階段などから落ちることによって救急搬送された人は、5年間で30万人以上に上る。「ころぶ」だけで歩行困難なんて大げさに聞こえるかもしれないが、実際には転倒で重症・中等症のけがと診断される人は全体の4割だ。
また、転倒や転落事故で亡くなる人は交通事故による死亡者の3倍以上になり、高齢者にとって「あの世への一丁目」でもあるのだ。
ここで注目すべきは、転倒の大きな原因が足指の衰えにあるということだ。高齢者133人を1年間追跡した研究によると、転倒経験のある人の足指の握力は20%低いとの報告がある。
「足指の力」とは、簡単に言うと、足の指でモノをつかむ力のこと。足指が強いと坂を上るときに踏ん張ることができたり、意識せずとも速く歩くことができる。高齢者だけではない。野球のピッチャーが投球する際にも足指はマウンドをつかみ力を発揮する。
近年知られるようになった足指の重要性
その一方で、日常的に足指の力がどれぐらいあるのかを意識している人は少ない。血圧のように自分で測る手段が身近にないからだ。定期健康診断でも足指力を測る検査はない。それもあって、足指の重要性が知られるようになってきたのは、最近のことなのである。
医学界では足指と老化の関係に早くから注目してきた研究者もいる。畿央大学(奈良県)の瓜谷大輔教授もその一人だ。理学療法士でもある瓜谷教授は、他の研究者たちと協力して足指の筋力を測る機器を開発。10年以上かけてデータ収集と分析を行ってきた。
その、瓜谷教授の研究室を訪ねると、室内の一角にカステラの箱(一斤)を少し大きくしたような機器が置いてある。「足指(足趾〈そくし〉)筋力測定器」だ。
どんな経緯で足指に注目するようになったのか、瓜谷教授に聞いてみた。
「私は理学療法士として、筋骨格系の疾患治療や研究を専門としてきました。大学(神戸大学)を出たばかりの頃は、むしろ膝や肩の治療が中心で、足指について専門的に学ぶ機会がありませんでした。10年以上前は、国内でもあまり手を付けられていない分野だったのです。一方、海外の論文を調査すると、足指に関する研究があって、体のバランスを保つ役割とか、転倒と深い関係にあることが指摘されていました。今の大学に移ってきて、まだ研究テーマが決まっていなかったこともあって、本格的に研究テーマにすることにしたのです」
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