「摂氏120度のサウナに閉じ込められる」極限状態からの脱出劇を描いた映画に注目が  悲劇を繰り返さないために何が必要なのか

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舞台はジョージア

 2025年12月15日、赤坂の個室サウナ店「SAUNATIGER」で火災が発生し、美容室経営者夫妻2名が亡くなった。内側も外側も脱落していたL字形ドアノブは今春に交換されていた。非常用ボタン受信盤は2年前から電源を入れていなかった。杜撰な安全管理に「人災」だという批判も高まる中、警視庁が運営会社の関係先に対して、業務上過失致死容疑で家宅捜索に入った。なんとも痛ましい事件を受けて今、サウナに閉じ込められる恐怖を描いたある映画が注目を集めている。実話を基にしたとされる物語から学ぶことも少なくないということで、社会構想大学院大学教授で映画評論家の北島純氏が紹介する(*以下、映画内容の紹介を多く含みます)。

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 サウナに閉じ込められる恐怖と救出を描いた映画は、2011年に公開されたジョージアの映画「247℉」(レヴァン・バキア、ベカ・ジュブリア監督)だ。

 ジョージアは黒海の東岸にある旧ソ連圏の小国(旧グルジア)。「ジョージア映画なんて見たことない」という人もいるかもしれないが、実はジョージアの首都トビリシは旧ソ連時代の映画芸術の中心地の一つ。セルゲイ・パラジャーノフ監督(アルメニア人)やオタール・イオセリアーニ監督といった映画史に名を刻む巨匠の出身地でもある。

他の3人を地獄に突き落とす

 ジョージアは温泉やサウナでも有名で、トビリシという都市名の語源は「温かい」。温泉に由来するのだ。日本と同じように、国民の間に温泉やサウナを楽しむ文化が根付いている。

 そのジョージアにある湖畔のロッジ(山荘)が映画の舞台だ。男女4人の若者がロッジのサウナに入るが、アクシデントでドアが開かなくなり、室温が「247℉」に達しようとするサウナに閉じ込められてしまう。

 247℉とはファーレンハイトつまり華氏247度のことで、日本で使われる摂氏(セルシウス)に換算すると約120℃に相当する。灼熱の密室と化したサウナから若者らは、どうやって脱出しようとしたのか。

 主人公ジェナ(スカウト・テイラー=コンプトン)は、3年前に交通事故で婚約者を失い、助手席に乗っていた自身も車中に閉じ込められるというトラウマを抱えた女性だ。以来ふさぎ込んでいるジェナの気晴らしにと、幼馴染のレネ(クリスティーナ・ウロア)が小旅行に誘う。湖畔にある村の祭り(五月祭)に参加しようというのだ。

 湖畔で待っていたのは、レネの彼氏であるマイケル(マイケル・コポン)と、その友人イアン(トラヴィス・ヴァン・ウィンクル)という爽やかマッチョ二人組。イアンは、ロッジのオーナーであるウェイド(タイラー・メイン)の甥っ子だ。もともとは大学で物理学を専攻していた聡明な若者だが、今は作家志望に転じている。対するマイケルは明るいムードメーカーだが、享楽主義者の大酒呑み。レネは心の中では愛想を尽かしている。このマイケルの失態が他の3人を地獄に突き落とす。

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