「背中が丸まっていると死亡リスクは2倍に」 対策のための食事法は? 「日本人は圧倒的にビタミンD不足」

ドクター新潮 ライフ

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たったの4分

 いずれの体操も、ジムに通うなどしてお金をかけることなく、器具も用意する必要なく簡単に行うことができるのが利点です。私自身も、座りっぱなしで診察を続けているとどうしても姿勢が悪くなってくるので、空き時間に「椅子で背中伸ばし体操」を実践するように心がけています。

 どちらの体操にしても、朝晩1日2回行ったとしても計4分です。たったの4分で、死への入り口である背中の丸まりの予防に役立つのであれば、自身の命を削らないために実践しない手はないと思います。

 そう言われても、自分はすでにかなり腰が曲がってしまっているから体操なんて無理――そのような人でも、決して「動くこと」をあきらめないでください。かつては、衰えてしまった人はそっとしておいてあげようという考え方もありましたが、いまでは動けるうちは動くべきであるという「運動療法」の効果に関するエビデンスがたくさん出てきています。

 歩くことをやめてしまったら、あっという間に筋力は落ちてしまいます。あくまでけがのリスクを考慮し、安全な状況でではありますが、とにかく動けるうちは、つえを突いてでも、手押し車を押しながらでも、自分のできる範囲で歩く。これが、寝たきりにならないための、まさに「転ばぬ先のつえ」になるはずです。

ビタミンD摂取量が圧倒的に不足

 脊柱後弯の予防には、当然、食事も重要です。特に私が「筋骨四大栄養素」と呼んでいるタンパク質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの積極的な摂取が欠かせません。とりわけ、日本人はビタミンDの摂取量が圧倒的に不足しているので注意してください。

 私がアメリカに滞在していた時、ビタミンDを加えた牛乳が売られていたことが印象に残っています。欧米では、それほどビタミンDの重要性が浸透しているということなのだと思います。日本でも、ビタミンD摂取への意識が高まることを期待しています。ビタミンDを多く含む食材には、鮭、まいわし、きくらげ、まいたけなどがあります。

 最後に、医師としての私の考え方をお伝えさせていただきたいと思います。私は外科医ですが、できることなら脊柱後弯に関する手術はしたくないと考えています。なぜなら、手術は患者さんの体に大きな負担をかける上に、可動域が狭くなるなどのリスクも孕んでいるからです。従って、できる限り手術になる前の段階での対処が求められるわけです。

 そのためにも、まずは背中の丸まりを自覚するところから始めてみてください。背中は見えにくく、気付きにくいのは確かですが、そこから老いは始まるのですから、それを放置するのは自分で自分の寿命を縮めていることに他ならないと思うのです。

野尻英俊(のじりひでとし)
順天堂大学医学部附属順天堂医院・脊椎脊髄センター副センター長。順天堂大学医学部卒業。整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医・指導医。専門は脊椎変性疾患、脊柱変形。年間約3000人の診療にあたっている。昨年6月に『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』(アスコム)を出版した。

週刊新潮 2025年11月20日号掲載

特別読物「死への入り口 『背中の丸まり』を防ぐ」より

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