「夜の入浴はサボってもOK」 50代から90代、各世代ごとの健康法を東洋医学のプロが伝授
攻守合わせたケア
腎気が衰えていく90代は、下半身の力の低下を補うために、まずは無駄に気を発散し過ぎないよう規則正しい生活を心掛けてください。これは従来の東洋医学の考えに基づいた「守りのケア」ですが、そこに現代的視点を取り入れた「攻めのケア」としてスクワットなどの筋トレも推奨しています。もちろん、無理のない範囲でということが大前提ですが、現代医学によって筋肉は何歳からでも鍛えられることが明らかになっています。この知見を取り入れた“新・東洋医学”として、「攻守合わせたケア」が大切です。
従来の考え方をアップデートする意味で、「必ずしも三食にこだわる必要はない」ということも、私は中高年の患者さんにお伝えしています。規則正しい生活には、きっちりと三食を摂ることが欠かせないように思えますが、コロナ禍を経て、リモートワークなどが増え身体活動量が減ったり、あるいは消化機能が衰えたりしているのに、無理やり三食摂ることは逆に身体に負担を掛けてしまうからです。
なお、生活スタイルに関して言うと、これからの季節は「夏よりも早く寝て、遅く起きる」で構いません。東洋医学では、「春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する」という四季の概念があり、養生はこの変化に適応することが重要になります。冬は気を蔵する「蔵気」の季節であるため、睡眠時間を長めに取り「気」を貯めるようにしましょう。この道理に反すると腎気を損傷して、春の生気に適応できなくなります。気温や日照時間(大宇宙)に身体(小宇宙)を合わせるのは自然な生活スタイルなので、1時間程度であれば「早寝、遅起き」でも気にする必要はありません。とにかく眠気に抗(あらが)わないことが重要であり、短めの昼寝も有効活用してみてください。
疲れているなら、夜の入浴は「割愛」
また、「夜には必ず入浴」という“常識”も、その人の状態によっては固執する必要がないと考えます。日中忙しくてクタクタになり、それでも頑張って帰宅後にお風呂に入る。これは、特に体力がない女性などにとってはストレスとなり、心身“不”一如の引き金になりかねません。身体が頑強な人ほど無理を重ねて早く亡くなり、逆に弱い人のほうが適当に“抜く”ことが上手で、「気」を無駄遣いせずに長生きするというのはよくある話です。疲れているのなら、夜の入浴は“割愛”して、早く床に就き「気」を貯めることを優先してみてください。大切なのは、それぞれの年齢、体力に合わせた心身一如です。
健康マニアの人に限って、サプリメントや運動など、何でも「プラス」しようとして頑張り過ぎてしまう傾向がありますが、時には「マイナス」「引き算」の考え方も取り入れる。休息、休養は「サボり」などではなく、「積極的なメンテナンス」なのです。防災と同じで、身体に災いが起きる前に休み、健康と病の間の「未病」の段階で回復に努める――。2000年の歴史と現代の知恵を合わせた「新・東洋医学」を、ぜひ人生100年時代の健康長寿の一助にしていただければと思います。
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