「夜の入浴はサボってもOK」 50代から90代、各世代ごとの健康法を東洋医学のプロが伝授

ドクター新潮 ライフ

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老いと五臓

 五臓とは、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」を指し、これは身体と心を含めた概念であるため、西洋医学で言う臓器とは必ずしも一致しません。例えば「肝」は自律神経のコントロール、怒りの感情の働きに関わり、「腎」は生殖・老化、驚きや恐怖の感情の働きを司る、といった具合です。

 さて、メンドーサの話です。彼は狂気さえ漂わせる丈の拳の脅威に恐懼(きょうく)し、怯え、そして疲弊していった。まさに「腎」がダメージを受け、黒髪から白髪への「老化という変化」を瞬時にして強いられてしまったのです。

 なお、その他の五臓について簡単に説明しておくと、「心」は心臓や循環器系機能や喜びの感情、「脾」は胃腸などの消化器系機能や思慮、「肺」は呼吸機能や皮膚の保全、憂えや悲しみの感情、これらをそれぞれ司ります。

 名作漫画を例にとって「老いと五臓」にまつわるエピソードを紹介しましたが、冒頭で触れたように、五臓の働きに基づいた「人生100年モデル」は、中国最古の医書とされる「黄帝内経(こうていだいけい)」にすでに示されています。

老化の過程を2000年前に見抜いていた東洋医学

 具体的には、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢で心身の変化が生じ、女性は28歳、男性は32歳で身体と性機能のピークを迎え、以降は徐々に衰えていく。そして、性ホルモンの影響が少なくなり、性差がなくなっていくそれぞれの世代での衰え、老化のポイントが次のように解説されています。

・50歳 肝気が衰え始め、胆汁が減少し、目が霞み出す。筋肉が衰える。

・60歳 心気が衰弱を始め、憂えや悲しみが増し、怠惰になって横になることを好む傾向が増す。血液循環が悪くなる。

・70歳 脾気が虚弱になり、皮膚がカサカサになっていく。消化機能が衰える。

・80歳 肺気が衰え、言葉を言い間違える。呼吸機能が衰える。

・90歳 腎気、血気が枯れ、腎臓機能が低下する。下半身の力が衰える。

・100歳 五臓の気が全て失せ、亡くなる。

 どうですか? 2000年前に、見事に中高年の心身の衰えを指摘していると思われるのではないでしょうか。とりわけ70、80、90歳のそれぞれ最後の一文を見ていただくと、現代を生きる高齢者の健康上の大きな課題である「フレイル(加齢に伴う健康と要介護の間の虚弱状態)」にピタリと当てはまることが分かります。

 いまになって、西洋医学の病理学などから科学的に裏付けられている人間の老化の過程を、東洋医学はしっかりと見抜いていたわけです。人生100年時代のいまこそ、その知見を活かすべきである所以(ゆえん)です。

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