「夜の入浴はサボってもOK」 50代から90代、各世代ごとの健康法を東洋医学のプロが伝授
「本来100歳まで生きられる」
ちなみに、東洋医学と西洋医学は対立するものではありません。
例えば、著書『LIFE SPAN(ライフスパン) 老いなき世界』が話題となった、ハーバード大学医学大学院の教授であるデビッド・A・シンクレア氏は、老化とは病気の一種であり、治療可能であるという概念を提唱して注目を集めました。この考えは、手術のような「科学的な治療」を前提としていない東洋医学とは一見、矛盾しているように感じるかもしれません。
しかしシンクレア氏は、“まずは”生活習慣を変えることによって長寿遺伝子を働かせ、元気でいられる期間を延ばすことが可能であると説き、“その先に”科学的な技術の進歩による「老化治療=若返り」もあり得ると指摘しています。
一方、東洋医学も、「人間の身体は本来100歳まで生きられるポテンシャルを持っている。上手に心身をメンテナンスし、そのポテンシャルを全(まっと)うしましょう」という考え方です。決してシンクレア氏の概念と相反するものではないと私は考えます。
では、100歳まで生きられるポテンシャルを大事にし、枯渇させないようにするにはどうすべきか。東洋医学では変化を自然のものとして捉えます。つまり、歳を重ねれば心身が衰えていくのは当たり前のことであると受け入れることが重要になります。
ポジティブ・エイジング
私たちの持つ生命力をひとつのボールに喩(たと)えてみます。そのエネルギーボールの大きさ自体は、加齢とともに否応なく縮小していきます。「アンチ・エイジング」という言葉からは、ややもすると縮小そのものを食い止めようというニュアンスが漂ってきますが、東洋医学ではそうは考えません。
ボールが小さくなるのは当然。大事なのは、そのボールの中のバランスを保つことであり、それが保たれていれば、ボールは小さくなっても年齢相応の健康を維持できるというのが東洋医学の健康観なのです。要は、「ボールの縮小」(老化)を所与のものとして受け入れ、それに囚(とら)われず、その「縮小のスピード」をできるだけなだらかにしようという発想です。この東洋医学的な老化観を、私は現代風に「ポジティブ・エイジング」と呼んでいます。
そのポジティブ・エイジングに欠かせない東洋医学の大切な概念が心身一如(しんしんいちにょ)であり、中庸です。五臓の説明のところで申し上げたように、身体と心は連関していますので、そのバランスを保ち、また、あらゆることでやり過ぎたり、我慢し過ぎたりしない中庸がポイントになってきます。
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