「浪人時代の年収はいまで言うと1000万円」 上皇陛下の執刀医が語るアルバイトのススメ 「外科医としての力量のベースは、パチンコ」
窮屈な時代だからこそ
〈「働き方は、世相と共にうつろうもの。職場の選択に勝ち負けはない」と語る天野氏は、現代に生きる若者に訴える。〉
今はいろんなことに締め付けられてしまっていて、手足を伸ばせない窮屈な時代かもしれません。だからこそ今の若者には、多少のミスがあっても、それを経験として成長できるような場を求めていってほしい。先ほど話した日本以外のアジアや中東あたりから来る若者は、そういう思いで来てるんじゃないかと思うんです。日本人の海外留学が減ってるっていうのも、言葉が通じないから格好悪いとか、恥をかきたくないとか、そんなふうにして自分で自分を縛ってしまっているからでしょう。周りが自分をちゃんと評価してくれる、いいことがあれば持ち上げてくれる、そういう社会の側面に自分の身を置くっていう経験が、今こそ必要なんじゃないかと思うんです。で、それはもうまさしくアルバイト。自分の生活が掛かっている仕事だとまた違う。アルバイトというのは基本、基礎になる部分が、例えば親の収入だったりとか、担保がある中で上積みでやることなんで。精神的に追い詰められないでやれるんじゃないかと思うんですよね。
学生という立場で、「労働者だろ?」って目で見られて働く体験は、少なくとも個人的にはすごく生きてきましたね。
闇バイトにご用心
〈最近は、いわゆる“闇バイト”が社会問題になっているが……。〉
アルバイトをしようとして、大きな間違いを犯してしまったら困るんですけどね。携帯端末なんかで入って、変なサイトで騙されたりとか、適当に使われちゃったりとか。
で、そういう闇バイトのようなものに対する恐れとかがあるせいで、挑戦するって気持ちそのものが萎えちゃってるじゃないですか。挑戦する。学生としてただ教育を受けるだけじゃなくて、社会の中で社会人として一歩踏み込んでみる。こういった挑戦をぜひやってほしいですね。
挑戦といえば、学生もですけど、自分の経験を踏まえていうと、40代。その頃、それなりに収入も安定して家族もいて足場もできていましたけど、今のままこの病院で朽ちていいのか? みたいなことを思い始めて、もう1回チャレンジしようと大学に戻ったんですね。医者にも40代から50代ぐらいで、いろんなことを考えて行動に移す人がいるんです。そのようなことを実行に移せるのも、アルバイト経験によって外の病院の仕組みだったりとかを、比較的冷静に見られるようになったからなんです。そちらの方が成長できそうだ、やり甲斐がありそうだと思って転職を決意する。もう1回ステップアップしようとする。そういう心境が、色々と役職がついてきた頃にあると思うんです。リタイア後の人生を積極的に考える人には、そういう転機を計画的に採り入れるっていう人もいるように思います。
学生時代だけじゃなくて、転職、仕事と仕事の間の期間でも良い。シルバー世代にもアルバイトはおすすめですね。何もしないと身も心も老いてしまうので。若い人達と接するための若作りは重要です。今まで自分ができなかった職種にどんどん首を突っ込めば良いと思います。この間、私と同じぐらいの年の人がデパートの店員さんで、お菓子を売っていましたけど、ポイントの付け方が分からなくて年下の人に訊いて、「しょうがねぇな、おっさん」みたいな感じで対応されていましたけどね。まあ、そういうこともありなんじゃないかな。
アルバイトではありませんが、資格を取って60歳を過ぎてから、自分の人生を切り開いていく人もいますよね。例えばあるポストまで行ったキャリア官僚が、退職後に弁護士資格を取って企業法務やったりとかね。生活のためのみならず、これまでと違った立場で今まで付き合った人達と関係を持とうという、これも立派な“挑戦”ですよね。
今の人たちは、労働マーケットが売り手市場じゃないですか。だからすごく大きなチャンスなので本当に勿体ないなという思いです。
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