「浪人時代の年収はいまで言うと1000万円」 上皇陛下の執刀医が語るアルバイトのススメ 「外科医としての力量のベースは、パチンコ」

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きわどい技を駆使

 それはともかく、研修中に身につけた、結構きわどい技を救急で来た患者さんに駆使しました。幸い大きなトラブルはなかったけど、今思うとよくやったなと思うことがいっぱいありますよ。地方に行くとまだあるかもしれないけど、都会では当直の医者がきわどい医療行為をするということはまずない。今では万が一の医療訴訟などを気にしますからね。でも当時は目の前にいる苦しんでいる患者さんを何とかしたいという思いで、普段は手も出せないようなことをたくさんやっていました。当時はそういうことも許されていたんです。バイト先には大変感謝されますし、患者さんからも御礼を言われて嬉しかったですね。

 本業に就くまでのアルバイトは、本業に繋がることをインサイドあるいはアウトサイドから教えてくれる貴重な経験の場です。当時の自分にとっては、欲しいものを手に入れるための単なる金稼ぎだったものの、今思えば、それらは良い苦労であり、良い知己を得たという振り返りもあります。何にでも挑戦した当時の熱い思いが今、困難に出会っても前進できるという気持ちを呼び起こしてくれています。

技術や知名度だけでは……

〈若い頃に様々なアルバイトを経験した天野氏。そんな氏の施術を受けるために、国内外から数多の患者が来院する。〉

 若者には、「感謝」「信頼」「応援」、この三つの調和をうまく取れるようになるべきだと言っています。技術や経験値が高いと言われている医者は世の中に大勢います。だけど、必ずしもそういう医者のところに患者さんが詰めかけているかといったら、どうでしょうか。おそらく技術や地域における知名度だけの医師は多くの中に埋没した状況にいると思うんです。患者さんが名指しで探して来てくれる医者というのは、接遇だったり、患者さんに対する包容力だったりを自身で培ってきた結果だと思うんです。そして、そこに至るまでの人間力を培うのに役立つのがアルバイトなんです。

 アルバイトっていうと、別にそこまでのことかって思うかもしれないけど、みんな年を取るじゃないですか。特に我々がいる医療の世界では世代を超えたコミュニケーションや付き合いというのをやらなきゃいけない状況が必ずある。その時にアルバイトの経験が役に立つんです。一般社会の中の秩序正しいコミュニケーション能力を現場の中で身につけていく。そして、その経験値によって、またさらに自分自身の可能性を見出せる、そんなふうに思います。

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