「映画泥棒」に「マナーCM」で15分…シネコンに行くたびに感じる“映画の本編が始まるまで長すぎる問題”には理由があった

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盗撮された『帝国の逆襲』

「スマホで簡単に録画できるようになってから、映画館での盗撮は、格段に増えています。特に日本のアニメーション映画は狙われやすく、この夏も、新宿のシネコンで、『鬼滅の刃』2時間半をまるごと盗撮していた韓国人留学生が逮捕されています。韓国公開前に、DVD化するか、YouTubeにアップするつもりだったようです」

「鬼滅の刃」については、劇場限定のはずの予告編がネット上に流れたこともあった。もちろん、盗撮の違法映像である。

「映画館の盗撮については、いまもむかしも、変わらないイタチごっこが繰り広げられています。いまだからいえますが……」

 と、興行会社スタッフが打ち明ける。

「わたしは、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』を、1980年5月のアメリカ公開直後に、ビデオで観ています。日本公開の1か月前です。行きつけの高田馬場のレンタル・ビデオ屋のオヤジが、“いいビデオが手に入りましたよ”と、貸してくれたんです。外見はふつうのVHSビデオ・カセットでした。てっきり、裏ビデオかと思ったら、これが『帝国の逆襲』だったんです。明らかに、アメリカの映画館で盗撮した映像で、客の歓声なども入っています。しかし、ダビングにつぐダビングで画質も音質もひどいものでした。それでも、大ヒット作の続編だけに、興味津々で観た記憶があります。あの当時ですから、それなりの大きさのビデオカメラで撮ったはずです。よく、こんなことやったもんだと、驚きました。それに比べたら、いまのスマホなら、誰にも気づかれずに盗撮することも不可能ではないと思います」

 実は、この盗撮防止キャンペーンは、もっと早い時期に終了する予定だったが、そういうわけにはいかなくなっているようなのだ。

 そして、自社広告。たとえば、テアトルシネマ系(テアトル新宿や、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷、キネカ大森など)では、一時、住宅リノベーション〈リノまま〉のシネアドが流れていた。これは、テアトルシネマを運営する東京テアトルの不動産関連事業部門のCMなので、いわば自社広告になる。

 また、同グループやシネスイッチ銀座、角川シネマ有楽町などでは「TCGメンバーズカード」サービスの案内CMが流れるが、これも自社広告である。

「上映前の映像は、以上の4種類があるので、結局、けっこうな分量になってしまうんですね。また、売店が行列になりがちなので、そのための時間という意味もあります。シネアドは、TVやネットとちがい、閉鎖空間で、大画面・大音量なので集中せざるを得ません。観たくなくても、観ざるをえないので、効果が高いといわれています。現在のような、シネコン・スタイルの映画館がふえるかぎり、シネアドが減ることは、ないと思います」

 だからといって、上映開始の15分後ギリギリに駆けつけて、まわりに迷惑をかけることはやめたいものだ。ましてや、盗撮など、もってのほかですよ。

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。

デイリー新潮編集部

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