韓国「戒厳令」1年 “日本に勝るK民主主義”の誇りはどこへ… 「やっぱりアジアのベネズエラ」――鈴置高史氏が読む
「韓国はやはりアジアのベネズエラになった」と韓国観察者の鈴置高史氏は言う。1年前に保守政権が無理筋の戒厳令を宣布したが即、挫折。すると今度は政権を奪取した左派が、保守弾圧のため堂々と三権分立を壊し始めたのだ。
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裁判所も支配へ
鈴置:2024年12月3日午後10時28分。当時の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を宣布しました。これに対し国会が直ちに解除を決議。大統領も応じざるを得ず、戒厳は6時間ほどで終わりました。
しかし、これを期に韓国の激動が始まったのです。2025年4月、尹錫悦氏は大統領を罷免されました。6月には左派の李在明(イ・ジェミョン)氏が政権を握りました。同月に特別検察官も任命され、国会が前政権の犯罪を裁き始めました。
韓国人――左派から中道の人々は「戒厳令に抵抗した市民」を強調し、民主主義への素早い復帰に胸を張りました。「戒厳令が宣布されても『韓国すごい』『米国人や日本人より民度が高い』と誇る韓国人」参照)。
日本人に対し真顔で「世界に冠たるK民主主義」を誇る韓国人も登場しました。韓国人は兵器から音楽まで、国産品に「K」を冠して世界に誇りますが、ついに「民主主義」までその対象となったのです。
しかし実際は、民主化宣言(1987年6月)により、ようやく達成した韓国の自由と民主主義が、38年後の今、音を立てて崩れています。戒厳令により「殺されかけた」と考えた左派の政治家が、保守派を根こそぎ監獄に送るべく、裁判所の支配に動いているからです。
ちなみに李在明氏は「戒厳が成功していたら、ワタリガニの餌になっていた」としばしば言います。戒厳軍は左派の政治家や記者、ユーチューバーを逮捕して船に乗せ、沖合で爆破して船ごと沈める計画だった、との噂が流れたからです。
本当の目的は「夫人を守る」
――そもそも、戒厳宣布の目的は何だったのですか?
鈴置:尹錫悦大統領は宣布の際、「北朝鮮の脅威から国を守るため、(韓国内の)反国家勢力を排除する」と宣言しました。もっとも、今では夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏を守るためだった、との見方が多い。
中央日報は2025年9月15日から11月27日まで、22回にわたり「実録 尹錫悦時代」(韓国語版)を連載しました。取材チームは同政権中枢にいた数十人に話を聞きました。
元参謀の多くが「戒厳は夫人のためだった」と告白したそうです。番外編である「尹大統領の参謀が語る真相 『金建希夫人のために戒厳をしたと考える』 [戒厳1年秘話](1)」(12月2日、日本語版)が書いています。
確かに、尹錫悦大統領が掲げた戒厳宣布の理由は説得力に乏しかった。憲法77条は「戦時・事変又はこれに準ずる国家非常事態」の際にのみ戒厳宣布できると定めています。しかし、「北朝鮮の脅威」が国家非常事態と言えるほどに高まっていると考えた専門家はいませんでした。
だから尹錫悦氏らは職権乱用罪に加え、「勝手に軍隊を動かし憲法秩序を乱した」として内乱罪で裁かれています。中央日報と韓国ギャラップが11月28、29日に実施した調査によると、国民の63%が「内乱罪に該当する」と考えています。「該当しない」は29%です。
「『3大特別検察を信頼』46%、『不信』43%…進歩層の67%が『信じる』[戒厳1年世論調査]」(12月1日、韓国語版)が報じています。
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