「貧相で、気が弱そうで…。これが大統領を殺した男か?」 オズワルドと間近で接した日本人記者の3日間 署に駆け付けた実母は「息子は犯人ではない!」と訴えた 【ケネディ暗殺秘話】

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 11月22日は、アメリカ第35代大統領のジョン・F・ケネディが暗殺された日だ。1963年の事件発生から62年。今年は、1月に就任したトランプ大統領が本件に関わる機密文書の解除を命じたことも話題となった。そんな今秋、米現代史研究家の奥菜秀次氏の元に、届いた一通のメール……。それは暗殺犯、リー・ハーヴェイ・オズワルドが事件の2日後、ジャック・ルビーによって射殺された現場に居合わせた、ある日本人について問い合わせるものであった。その日本人が遺した見聞録を紐解くと、そこには現場に居合わせた者でしかわからない、さまざまな秘話が溢れていた。事件から62年を機にそれを紹介し、知られざるオズワルド射殺のドラマを明らかにしてみよう。

【奥菜秀次/米現代史研究家】

【前後編の前編】

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エミー賞受賞者からのメール

 今年9月17日、ケネディ暗殺を長年研究しているデール・マイヤーズから筆者に以下のメールが来た。

「(ケネディが暗殺された)11月22日から24日までの間、(暗殺犯オズワルドが拘留されていた)ダラス署内のテレビ映像に日本人記者と思しき人物が頻繁に映っていますが、この人の身元に心当たりはありませんか」

 メールには該当人物のテレビ映像のキャプチャーが添付されていた。

 マイヤーズは暗殺研究家としても有名なアニメーターだ。オズワルドが逃走中に起こした“ティピット巡査殺害事件”に関する著作『犯意を持って』は高評価を得ており、多くの暗殺検証番組に出演している。2003年に米ABCテレビで放映された検証番組での「ザプルーダー・フィルム」(ケネディ暗殺の瞬間を捉えたフィルム映像)のコンピューター生成CGによる再構成に対して、エミー賞を授与されている。

佐々淳行という誤認

 筆者は10年以上前から彼のブログに投稿していたが、突然のメールには驚かされた。彼曰く、

「私は、(事件現場)ディーリー・プラザにある(狙撃者がいたビルで現在ケネディ暗殺博物館である)シックス・フロア・ミュージアムが所蔵する、1963年11月22日から24日の週末に撮影されたテレビ放送のアーカイブ映像を検証していました。すると、深夜の記者会見直前の金曜日(11月22日)の夜、ダラス警察本部の廊下で、そして翌日(11月23日)に撮影された映像の中で、その『身元不明』の日本人男性を発見しました。記者団の中には、他にも数人のアジア人男性がいたようです。ですが、私の関心は記者会見でジャック・ルビー(オズワルド暗殺犯)の近くに立っていた男性に向けられていました。この人は誰なのだろう? 日本なら知っている人がいるはずだ」

「複数の研究者が、その男性は佐々淳行という名の日本人警察官だとする、検証不可能な主張をしていました。私はそれを裏付ける証拠に信憑性を見出せず、基礎調査を行った結果、その男性は佐々氏ではないと判断しました」

 佐々淳行は元警察官僚で、東大安田講堂事件やあさま山荘事件に携わり、後に初代内閣官房安全保障室長を務めた人物だ。後藤田正晴(元官房長官。当時は警察庁の警備局長)の命を受け、事件の翌年1964年1月に訪米し現地調査を行った事実があるが、アメリカ人研究者が訪米時期を錯覚した結果人違いをしたのだろう。 

 そこで過去ブログに投稿していた日本人である筆者なら知っていると思い、共通の知人からアドレスを聞きメールを送ってきたというわけだ。

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