トランプより強烈だった! アメリカが生んだ「最強のトンデモ大統領」

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 まさかの「トランプ大統領」誕生が決まり、全米各地で反トランプデモが頻発している。

 特にハーバード大学など多くの名門大学を擁するマサチューセッツ州では、トランプ大統領に対する拒否感が強いようだ。

 マサチューセッツ大学が発行する老舗学生新聞「The Massachusetts Daily Collegian」は、「反知性主義の大勝利」という見出しを掲げ、トランプ大統領への警戒を呼び掛けている。

 さて、反知性主義の大統領と言えば、レーガンやブッシュJrを思い起こす人もいるかも知れないが、じつはアメリカ史上で最強の〈反知性主義〉大統領と目されている人物は他にいるという。

 以下、『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』の著者で、建国期のアメリカの歴史に詳しい森本あんり・国際基督教大学(ICU)副学長に話を聞いた。

荒くれ者の大統領

「本にも詳しく書きましたが、アメリカで最初の〈反知性主義〉大統領だと考えられているのは、1829年に第7代大統領に就任した民主党のアンドリュー・ジャクソンです。幼いころから腕白で、独立戦争で軍人として名を上げ、胸には決闘で受けた銃弾が残っていたという荒くれ者でした」

「ジャクソンは綴りを間違えてばかりいたので、選挙の際は、アメリカ屈指の名家出身でハーバード大卒の現職大統領アダムズの陣営から“ロバ(まぬけ)”と徹底的にバカにされました。これが今の民主党=ロバというキャラクターの由来です。しかし、結果は知的エリートに反感を持つ大衆の支持を受けたジャクソンの圧勝でした」

「大統領になったジャクソンは、特権階級の既得権を破壊する過激な政策を次々と断行します。まず、それまで行政府を独占していた東部エスタブリッシュメント出身の公務員を全員クビにして、自分を支持した人々と入れ替えました。さらに当時の中央銀行(第二合衆国銀行)の免許更新を拒否して、破産に追い込みます」

「先住民に対する政策も過酷なものでした。彼らが先祖代々住んできた土地を奪い取り、白人入植者に与え、先住民を遠くの居留区に強制移住させました。チェロキー族の〈涙の道〉の悲劇はこの時に起きたものです」

歴代屈指の名大統領

「まさに破壊的としか言いようのない大統領ですが、じつはジャクソンは歴代屈指の名大統領として高く評価されているのです。たとえば公務員を総入れ替えする政策は、公務員の特権階級化と腐敗を防ぐと高く評価されました」

「また、中央銀行を潰した後も均衡財政を維持することに注力し、決して放漫財政に陥りませんでした。さらにはサウスカロライナ州の離脱運動を未然に抑え込み、メキシコやフランスとの戦争を回避する知恵も見せました」

「ジャクソンは、上流階級の人間でなくても、また優れた学問や教養を修めていなくても、誰もが統治を行えるだけの知性と徳性を備えていると確信し、金持ちがより金持ちとなり、権力者がさらに大きな権力をもつようなシステムを破壊しました。まさに〈反知性主義〉の面目躍如です」

では、トランプも後世に評価される名大統領になれるのだろうか?

「ジャクソンには(白人限定ではあったものの)曲がりなりにも〈平等〉という理念がありました。しかし、トランプにはいかなる崇高な理念も見えません。『米国を再び偉大に』と言いますが、米国の偉大さは金や軍隊ではなく、自由・平等・人権といった普遍的価値を掲げることにあります。こうした価値を軽視すれば、米国の威信は保てないでしょう」

森本あんり
1956年、神奈川県生まれ。国際基督教大学(ICU)卒。東京神学大学大学院を経て、プリンストン神学大学院博士課程修了(組織神学)。プリンストンやバークレーで客員教授を務める。国際基督教大学人文科学科教授を経て、2012年より同大学学務副学長。主な著書に『アメリカ的理念の身体』(創文社)、『アメリカ・キリスト教史』(新教出版社)、『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書)など。

デイリー新潮編集部

2016年12月5日掲載

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