「貧相で、気が弱そうで…。これが大統領を殺した男か?」 オズワルドと間近で接した日本人記者の3日間 署に駆け付けた実母は「息子は犯人ではない!」と訴えた 【ケネディ暗殺秘話】
貧相な奴
そして5か月後、運命の11月22日が訪れる。この日、バスを利用した北米大陸縦断取材でサンフランシスコにいた小池は「ケネディ撃たれる」の一報を聞き、現地取材をしようとダラスに向かった。サンフランシスコから4時間の旅を終えた午後10時27分、ダラスの空港に着いた小池。タクシーの運転手からその10時間ほど前に起きた事件の進展と、容疑者が逮捕されダラス市警に拘留されたことを聞いて、暗殺現場のディーリー・プラザに降りて付近の人々に話を聞いた。そしてダラス署に向かい、真夜中に行われたオズワルドの記者会見を取材することとなった。ダラス署のカリー署長曰く、日本人記者は小池だけだったという。
その際に見たオズワルドの印象を小池はこう記している。
「『これが大統領を殺した男か、―――まさか』と思う、貧相な奴だ。ガンマンどころか、気の弱そうな店員といった感じである。その男めがけて、報道陣が殺到する。刑事たちの制止の声もあらばこそ、瞬時に彼は報道陣の人垣の中に没した。後方の連中は、机や椅子の上に飛び乗る。まるで兜町の場立ちのごとし。オズワルドは、薄汚れたシャツ姿だ。額に大きなコブが出来、眉間を割られて血をにじませている。誰何(すいか)した警官(奥菜注・ティピット巡査)を射殺し、映画館に逃げ込んだところを警官隊に包囲され、格闘の末逮捕されたからだという。両手には手錠だ。目玉がキョトキョトしている。そんな彼を三人のテキサスハット(の刑事が)脇がかえし、数人の私服警官が、報道陣との間に多少の空間を作り出す」
オズワルドはひたすら、自分の無実を訴えただけだったが、早くもダラス署側はケネディ暗殺犯と断定。アメリカの記者たちは同調し、他国、特にヨーロッパ勢は陰謀説を唱え始めたという。
暗殺を予期させる出来事
オズワルドが取り調べなどのために署内を移動するとゾロゾロ報道陣が付いてくる。小池もその中の一人であった。
「ある時、小生は一番前にいたために、押されて自分の顔が彼の顔とくっつくばかりになった。お互いに息がかかる。彼の冷たい手錠が手に触れる。逮捕された時のままの“シャツ一枚”の姿。襟の汚れまで、目の前に見えた」
ダラス署内の映像は全世界に中継されており、職員と報道陣の中でひときわ目立つ「角刈りの東洋人」の姿も流れていた。これを観た小池の上司は「『ダラスの警察の様子はテレビで手に取るようにわかっている。警察の中が、絶えず映し出されているからだ、GIカットの頭をしている君が廊下をウロウロしている姿も映っているぞ。サボったらすぐわかるよ』と電話の向こうで冗談を言った」という。
小池は日米警察の違いをこう評した。
「彼(オズワルド)を連行するため、いつも四、五人のテキサスハットを被った刑事が付き添っているのだが、報道陣をシャットアウトする気はなさそう。報道陣の人の波を、根気よく押しのけ押しのけ、進むのである。日本の警察でも、犯人が取調室へ出入りする時には、記者団やカメラマンが十重二十重に取り囲むことがあるが、犯人の身体に触れるということはない。アメリカの警察は、報道陣に対してなんと寛大でサービスのよいことか」
だがこれは、24日に起きたオズワルド殺害を予期させる出来事でもあった。
[3/4ページ]



