「貧相で、気が弱そうで…。これが大統領を殺した男か?」 オズワルドと間近で接した日本人記者の3日間 署に駆け付けた実母は「息子は犯人ではない!」と訴えた 【ケネディ暗殺秘話】

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オズワルドの母と妻、娘の来訪

 小池は、オズワルドに面会するためダラス署を訪れた彼の母親と、生まれたばかりの娘を連れた妻の姿も目撃していた。

「記者室はちょっと退屈ムードになった。捜査も取材も進展しないのだ。そんなとき、報道陣は思わぬ珍客を迎えた。オズワルドの母親マルガリータと、妻のマリナである。オズワルドに面会し、着替えなどを差し入れに来たのだ。エレベータ―で一階から上がって来て、三階の取調室へ入ろうとする母親は、大きなボストンバッグを持ち、妻は生まれて間もない赤ん坊を抱いている。たちまち報道陣の包囲下におちいる。母親はどこでも見られる中年婦人、妻は小柄、色白で化粧気がない。

 報道陣が情け容赦なく、『息子は暗殺犯人か』『夫の犯行を事前に知っていたか』と質問を浴びせる。

母親『私の息子は犯人ではない。彼はおとなしい子だ』。
妻『……』。

 オズワルドは、数年前、ロシア滞在中にソ連人であるマリナと現地結婚したのだ。だから彼女は英語がよくわからないらしい。母親は、息子が無実であることを繰り返しながら、マリナと共に報道陣の人波に押されるようにして、取調室に入った。

 その部室(ママ)には、小さなガラス窓があり、外から中の様子の一部が覗ける。報道陣は交代して中を見る。

 母親は、バッグから何着もの衣服を出して刑事に渡している。そのうちに、赤ん坊が泣き出した。妻がバッグから哺乳瓶を出してミルクを飲ませる。そしてテーブルの上に赤ん坊を寝かせて、おしめを取り替えた。小窓からこれを見ていて、オズワルドが大統領暗殺犯ならこの赤ん坊の前途や如何に? 妻はこれからどう生きるのだろう? 母親の気持ちは? と考えた。かくいう小生にも、結婚八年目の妻と小学校一年生の息子があり、大阪府豊中市の住宅公団アパートに残して来ているのだ。父母や弟たちは神戸市に住んでいる。肉親の情愛がふと心の奥を横切った。オズワルドの肉親たちは、哀れというも哀れなり」

 11月23日夜、カリー署長は口外禁止を公約させ、翌24日にオズワルドを郡刑務所に移送することを報道陣に伝えた。そして、その時に「事件」は起こった。

後編】では、小池が見た、ジャック・ルビーによる衝撃のオズワルド射殺の瞬間を再現する。

奥菜秀次(おきな・ひでじ)
ケネディ暗殺の1963年生まれの62歳。著作は日・台・米で出版されている。週刊新潮に寄稿多数。代表作『陰謀論の罠』(2007、光文社)、『アメリカ陰謀論の真相』(2011、文芸社)、『捏造の世界史』(2008、祥伝社)。最新作は構想48年執筆14年の大作『ケネディ暗殺最後の真実:歴史上最悪の捏造事件の内幕と全ての真相』(全五巻中、三巻まで刊行済、パブファンセルフ、2024~)

デイリー新潮編集部

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