有名私大に通う女子大生が“ドラッグの運び屋”に堕ちるまで…「タンポンよりも少し太い“ブツ”をえずきながら丸呑みしたんです」
はじまりは「売掛金」
「いつもこんなときだけ電話してごめんね……。私も驚いちゃったんだけど、妹のレナ(仮名・20歳)が、薬物の密輸に巻き込まれたようなの。恥ずかしいけど昔の私みたい……」
かつて私が逮捕したことのある女性「シーラ(仮名)」からの相談だった。彼女はアメリカ留学中に、交際していた男からコカインの「飲み込み密輸人」(コーク・ミュール、Coke Mule=コカイン運搬人)に仕立てられた過去を持つ。体内で薬物が漏れ出して、一時は命の危険に直面したこともある。現在は薬物と縁を切って立ち直り、自身のキャリアを生かしてモデル事務所を経営している。交通事故で両親を亡くしたが、親子ほど年齢の離れた大学生の妹・レナがいて、実の娘のように愛情を注いで大切に育てていた。
――レナが密輸だって? 驚いたな……。急いで捜査機関へ相談した方がいい。明日にでも連れて行きなさい。
私はそう伝えたものの、彼女の懇願に負けて相談を聞くことになった。
シーラの言葉を借りれば、「レナは無駄に美人すぎて、しかも才女」だった。実際、難関私大にも現役で合格を果たした。入学後は民俗学を学ぶためにカナダとベトナムへ短期留学したこともあった。帰国して日本での学生生活に戻ったものの、そこから彼女の人生は横道に逸れてしまう。友人に連れられて訪れた夜のお店にハマってしまい、高額な遊興費を稼ぐために自身も歓楽街で働き始めたという。
「レナはすぐにナンバ-ワンになったらしく、稼いだお金を目当ての男に貢ぐから夜のお店ではけっこうな太客だったみたい……。でも、結局は売掛金がたまって、容赦のない取り立てを受けるようになった。レナにしてみれば夢中で“推し”に課金する気分だったと思うけど」
「やつらは寄生虫だった」
2025年5月、悪質な営業行為を規制する法律の一部改正法が成立した。法規制を必要とするくらい、売掛金をめぐるトラブルが頻発し、深刻化していたということだろう。
実際、レナの借金は100万円以上に膨らみ、見かねた姉が立て替えたという。両親の命日に姉が「いい加減にしなさい」と諫めると「もう全然大丈夫だから。やつらは寄生虫だった」と目が覚めたようだった。しかし、結局はその後も夜のお店に通い続けたらしい。そして半年後。「実は、ツケを返すためにクスリの“運び”やるようになって……。ちょっとヤバいの。兄さん(筆者のこと)と話をさせてくれないかな?」と言い出したそうだ。
――相談の内容によっては捜査機関へ通報することになる。それでもいいんだな。それと、レナ本人は薬物をやっているのか?
「通報するのは構わないよ、レナも覚悟しているみたいだから。ただ、本人は薬物をやってないと思う。“留学中にひと通り経験した”とは言ってたけど、“お姉ちゃんとの約束もあるから、日本では全くやっていないし、ほしくもない。尿でも何でも提出するよ”って。実際、レナからはそんな雰囲気は窺えない。ただ、ひとり暮らしを許してから生活が乱れたのは事実ね」
かなり以前の話になるが、筆者はシーラを薬物依存から回復させるために、不安がる彼女を専門病院などに連れて行ったことがある。以来、シーラは定期的に私に連絡してくるようになった。そうしたなかで、私は妹のレナにも何度か会っている。
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