トランプから「原潜保有」を許された韓国 宿願だが…浮かれていられない“2つの障害”

  • ブックマーク

沿岸海軍には不要だろう

 今年8月25日、李在明(イ・ジェミョン)大統領はワシントンでトランプ大統領に初めて会った際、原潜の燃料用にと20%未満の低濃縮ウランの供給を要請しました。しかし、米国から色よい返事はありませんでした。

 米軍幹部は「沿岸海軍である韓国海軍の作戦海域は狭い。ディーゼル駆動で十分。原潜は必要ないはずだ」と痛いところを突いたと言います。韓国が核武装を念頭に濃縮ウランをねだっていることを知りながら、とぼけてそう答えたのでしょう。

 李在明政権はあきらめませんでした。10月29日に韓国・慶州(キョンジュ)で開いた米韓首脳会談で、大統領自身がトランプ大統領に「低濃縮ウランの供給」を直談判したのです。

 スピーチの最後に付け加える形で「原潜の燃料が我々に供給されうるよう、決断して欲しい」と発言したのです。スピーチ原稿に入れなかったのは、米国の事務方の制止を恐れてのことと思われます。

 会談後の記者ブリーフで、魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長は低濃縮ウランの供給に関し「トランプ大統領も共感し今後、協議を始めることになった」と説明しました。ただ、韓国側は「許可」が直ちに降りるとは想像していなかったようです。

 聯合ニュースの記事の見出し「[韓米首脳会談]原潜確保を公式化…“トランプの共感”土台に推進に弾み」(10月29日、韓国語版)がそれを示しています。ニュースのポイントは韓国の要請に置きました。米国の許可については「弾みがついた」程度の認識でした。

欲しければ米国で建造せよ

 ところが翌10月30日の朝(韓国時間)、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で突然に「許可」を表明したのです。以下です。

・Our Military Alliance is stronger than ever before and, based on that, I have given them approval to build a Nuclear Powered Submarine.

 念願叶った韓国人は大喜びしました。ただ、十数分後に大統領がさらなる記事――原潜はフィラデルフィアの造船所で造ることになる――を載せたため、韓国では混乱が始まりました。

・South Korea will be building its Nuclear Powered Submarine in the Philadelphia Shipyards, right here in the good ol’ U.S.A.

「フィラデルフィアの造船所」とは韓国の造船大手、ハンファオーシャンが昨年、1億ドル(150億円)で買収した「Philly Shipyard」(フィリー造船所)のことです。

 ハンファオーシャンの前身は大宇重工業。韓国で初めて潜水艦の建造を手掛けた企業で、建造実績は約20隻あります。

 トランプ大統領の米国建造案はクセ球でした。米国製の原潜の保有は認めるが、韓国での建造は許さない、ということですから。韓国内ではなく米国で造るとなれば、李在明政権の作戦は狂ってきます。

 非核保有国ながら原潜を欲しがった豪州に対し、米国は2032年以降に3―5隻のバージニア級原潜(水中排水量7800トン)を輸出する計画です。今度は韓国にも同じ方式を適用しようとトランプ大統領は言いだしたわけです。

 建造するのが韓国企業ですから、米国で培ったノウハウを持ち帰って韓国でも建造することは可能かもしれません。しかし、現時点ではそれを許可すると米国は言っていないのです。

次ページ:核燃料だけでいいんだけど

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。