「中国系マフィアは日本人を顎で使い…」 特殊詐欺、諸悪の根源は中国政府だった
ノルマを達成できないと、スタンガンで暴行
日本人保護の発端は、1月17日、17歳の高校生がタイ警察に保護されたことだった。高校生はオンラインゲームで知り合った男に家庭内の悩みを打ち明けたところ、「衣食住の面倒を見るから来れば?」と誘われ、男が手配した航空券でタイへ渡航。現地で男と合流後、ミャンマーに渡り、ホテルなどに滞在して特殊詐欺の「かけ子」として1週間働いた後、タイに戻ったところを、家族からの届け出を受けて保護・帰国した。
2月には、別の高校生もタイ警察に保護された。愛知県出身の16歳になる高校生は「海外で儲かる仕事がある」というインターネットの求人情報に応募し、昨年12月にタイに到着。迎えに来た別の男の車でタイ国境へ行き、徒歩で川を渡ってミャンマーに入国した。
「高校生は、金網で囲まれた特殊詐欺の拠点でホテルに滞在し、ミャンマーから日本へ電話をかけ、警察官をかたって詐欺に加担していた」
と、現地特派員。
「彼は“ノルマが課され、命令に背いたり、ノルマを達成できなかったりすると、スタンガンで暴行を受けた。毎日長時間働かされ、日本の高齢者を相手に『かけ子』をさせられていた”と証言しています」
なぜミャンマーとカンボジアが拠点に
2月20日、拠点の摘発に際しては、中国政府の支援を受けて、地元ミャワディを実効支配する少数民族武装勢力の「カレン民族軍」(国境警備隊)が実行した。逮捕された者の中には、「チンギス・ハーン」と名乗る指示役の〈中国語を操る男〉がいた。
そもそも日本人はどれほど詐欺に加担させられていたのか。タイ警察は、ミャワディに特殊詐欺の拠点は数十カ所あり、1万人が滞在し、日本人は約20人いると発表している。
ミャンマーだけではない。5月末、タイと国境を接するカンボジア西部の町ポイペトで、現地当局が特殊詐欺グループを摘発し、29人の日本人を拘束した。ここでも首謀者は中国系マフィアだ。現地事情通によれば、
「ポイペトは近年、カジノを併設した大規模ホテルが次々に建ち、中国語の簡体字(中国大陸などで使用される漢字)の看板が目立っています。カイン州での摘発が実施されて以降、特殊詐欺グループの動きが活発化していたといわれています。29人は日本へ送還後、愛知県警に逮捕されていますが、その中の一人が、現地では8人ほどの中国人に管理されて『かけ子』をさせられたと証言しています」
カンボジア当局は5月、過去3年間でオンライン詐欺や人身売買に関与した約2万4000人を摘発し、詐欺行為に加担した外国出身の4840人を救出したことを明らかにした。出身国は20カ国以上に上る。カンボジアでの特殊詐欺を巡っては、23年以降、40人を超える日本人が本国送還・逮捕されている。
ミャンマーとカンボジア。なぜ、両国は中国系マフィアによる特殊詐欺の拠点となったのか。
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