息子を溺愛する妻を見て「僕も母に愛されたかった」欲望はとんでもない方向へ… 46歳夫が“気づけば流していた”涙のワケ

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妻は一言…

 2年前、義父が引退した。周りはもちろん、雅秋さん本人も社長職を継ぐものだと思っていたが、義父は古参の社員を社長に据えた。もはや身内だけで経営はできないと確信したそうだ。彼は、新社長によって専務という肩書きはもらったが、経営にはほとんどタッチできなくなった。

「今まで貢献したのにという思いはあるけど、どうにもならない。そんなとき、淑恵さんのことが妻にバレました。僕が社長職を譲ってもらえなかったことと関係があるのかもしれません」

 妻から淑恵さんの写真を突きつけられた。何も言えずにいると、妻は一言「死ね」と言った。はっきりとゆっくりと、憎悪をこめた口調で。

「人に死ねと言われたのは生まれて初めてだったから、ものすごい衝撃でした。死ななければいけないようなことだったのかと。妻がどこまで知っているのかわからないけど、一般常識で言ったら確かにとんでもないことなのかもしれない。ただ、僕にとっては必要なことだった……」

 ただ、それ以降も家庭は変わっていない。妻は変わらず、中学生になった息子に過干渉を続けている。雅秋さんは、淑恵さんといるときの自分だけを「生きている」と感じながら暮らしている。いつまでこんな生活が続くのかわからない。

「でも今でもときどき、『死ね』という妻の声が蘇るんですよ、脳内で。死ぬつもりはないし、死にたくはないけど、その声にふらふらっと誘われる瞬間がないわけではなくて」

 なんだかつらい。彼は一言、そうつぶやき、黙ってお酒を飲んでいた。

 ***

 妻の言葉は、雅秋さんの胸に刺のようにして刺さり続けているようだ。淑恵さんとの逢瀬によって均衡を保っているようだが、それがもし、崩れることになれば……。彼の人生観に大きな影響を落とした幼少期については【記事前編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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