息子を溺愛する妻を見て「僕も母に愛されたかった」欲望はとんでもない方向へ… 46歳夫が“気づけば流していた”涙のワケ

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欲望の芽が開花した

 そんな気持ちを隠しながら、1年ほど一緒に仕事をした。その後、初めて食事に誘い、自分の気持ちを熱く語った。淑恵さんは「ふたりとも結婚しているでしょう」といなそうとしたが、彼は「だからこそ、愛情だけで関係を保てる」と口説いた。

「彼女を自分のものにしたい。どうしても。そんな強い欲求をもったのは初めてだったから、自分でも戸惑いましたが、ひたすら気持ちを伝えました」

 その気持ちに負けたのか、彼女のほうも彼と一緒にいるのが楽しかったのか、ついにそういう関係になれた。彼が期待していたよりずっと、淑恵さんはすばらしい肉体と心をもっていた。

「彼女に夢中になりました。義父の仕事をこなしながら、なんとか時間を作り出して、彼女と会った。彼女の夫が出張の多い人だったのが幸いでした。そういう関係を続けていくうち、僕の心の中で、悪魔が囁いていたんです。彼女を他の男に抱かせたいと。そのときの彼女の姿態を想像するだけで、息苦しいくらい官能的な気持ちになる。その誘惑に逆らうことができませんでした」

 それはもともと彼がもっていた欲望なのだろう。ずっと眠っていた欲望の芽が、淑恵さんと接することで目覚め、一気に開花してしまったようだ。

気づいたら泣いていた

 もろもろ手はずを整えて、ある男性をこっそりとふたりの逢瀬の場に呼んだ。雅秋さんが彼女とベッドに入ってしばらくすると、その男性が現れて一緒にプレイを始めた。淑恵さんは最初は気づかなかったが、すぐにおかしいと思ったのだろう。ハッとしたように身を起こして、ふたりの男性を見つめた。

「どういうことなのと怒りだしたんですが、その怒った顔が素敵で。お願いだから、彼としてみてと頼みました。その彼、とてもいい男なんですよ。見た目も気持ちも。彼女も無碍に断れないと思ったのか、あるいはもう途中までしていて体が欲していたのか、そのまま彼を受け入れてくれた」

 目の前で、自分の執着している女性が他の男と関係をもっている。それが彼には新鮮であり、とんでもない刺激であり、さらに深い悲しみにもつながった。つまりは感情が完全に「とっちらかってしまった」のだという。気づいたら彼は泣いていた。感動と落胆と悲哀とで放心状態になった。

「気づいたら彼は退室していました。僕は淑恵さんに抱きしめられて泣いていた。それがまた極上の幸せだったんです……大丈夫ですか、こんな話」

 半分うっとりしたように話していた彼が、ふと真顔になった。とんでもないことを言っている自分を恥じているのだろう。だが人の欲望というのは、理屈で語れるものではない。自分の欲望を現実にしたときの話をしている彼は、少し上気した顔になり、生き生きと見えた。

「そういうことをしてからのほうが、僕の淑恵さんに対する愛情は深くなった。離れられないパートナーを得たという思いが強くて」

 淑恵さんも彼の気持ちを徐々に理解してくれた。自分を傷つけることで愛情を確認したがっている彼の側面を、そのまま受け入れたのだろう。

 彼の心の動きはどういうものなのだろう。心のどこかで「母なるもの」を求めていた彼が、その「母なるもの」を穢されることで自らを傷つけ、それによって自身の愛情と興奮を得る。そういうことなのか。彼は「そういった複雑な感情もあるにはあるが、母なる好きな人が他の男としていて、自分のときより感じていると思うと、最大の幸せと不幸が同時に襲ってくる。それがある意味で快感になる」のだという。自分のキャパを超えた感情の動きが、彼の快感スイッチを押すのかもしれない。

 その後、少し倒錯した関係はずっと続いた。

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