穏やかな再婚生活に忍び寄る“かつての家族”の暗い影――息子への嫉妬に気づいた51歳夫が怯える「過去からの逆襲」
長男にはなんと言ったか
「強気に見える優希が、僕と関係をもったあと泣いていました。それを見たら、僕もなんだか泣けてきてしまって。ふたりともあの頃からこういう関係を望んでいたんだと思わされてしまった気がします」
ホテルを出て優希さんをタクシーに押し込みながら、「約束は守ってほしい」と伝えた。自宅に帰ると、長男がすでに帰っていた。どこへ行ってたんだよと聞かれ、優希さんを送り届けたあと、ひとりで飲んでいたと答えた。優希と連絡がつかないんだと長男は不安そうに言った。
「長男の部屋で、いったいどこで知り合ったんだ、どういうつきあいなんだと聞いたら、優希の言ったことは間違いではないとわかりました。年齢差で反対すると長男は反発するだけだと思ったから、結論は出すな、もう少し時間をかけろということだけ伝えました。長男は『うん』と煮え切らない返事でしたけど」
今更気づいたコトの罪深さ
その後、長男は研修などで多忙な日々を送り、なかなか会えない日々が続いていたようだ。そんなある日、優希さんから秀顕さんに連絡があった。
「あなたとの約束を守って、長男くんとは少しずつ疎遠にしてるからと言っていました。長男が、なかなかデートできないから優希さんのところに泊まりに行きたいと言ったことがあるそうです。でも優希は断ったと。『秀さんとの約束を守ってるの。だからご褒美ちょうだい』って。それを突っぱねられるほど僕は強い人間じゃないんですよ」
再度、優希さんと会ってしまった。その帰り道、電車で疲れたように立っている長男とばったり会った。仕事って大変だよねと長男は照れたように笑った。
「でも、おとうさんもこうやって僕らを育ててくれたんだな、仕事で嫌なこともあっただろうなと思って、改めて感謝してるよと言われたんです。思わず涙目になって長男に笑われました。おとうさんも年だな、と」
その瞬間、秀顕さんは自分がしていることの罪深さに気づいたという。今は優希さんからの連絡にも「悪いけど……」と断り続けている。優希さんを刺激しないように一歩ずつゆっくりと後退していこうと考えているそうだ。
「怖いのはいきなり逆襲がくることですよね。それを予測するなら、恵里におおまかなことだけでも話しておいたほうがいいような気もするんですが……。恵里はたぶん、まったく理解できないんじゃないかと思うし。うーん」
最後は頭を抱えてしまった秀顕さん。妻と息子たちにずっと隠し通していられるよう祈るしかない。
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秀顕さんの「幸せ」は、思わぬ形で壊れてしまった。優希さんを駆り立てるのは、彼への復讐なのか、恋心なのか……。一度目の結婚が失敗に終わったてん末は【記事前編】で紹介している。
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