穏やかな再婚生活に忍び寄る“かつての家族”の暗い影――息子への嫉妬に気づいた51歳夫が怯える「過去からの逆襲」
【前後編の後編/前編を読む】シングルマザーと結婚、“娘”は10歳年下…「あの子のほうがお似合い」と言われた妻のひきつった笑みと、2年半で終わった家庭生活
田所秀顕さん(51歳・仮名=以下同)は、25歳のとき、7歳上の女性・美和子さんと出会った。高校時代に出産した娘の優希さんをひとりで育ててきたという彼女の強さに惹かれ、結婚。3人での暮らしは穏やかに始まったが、やがて秀顕さんと10歳しか変わらない優希さんからの“接触”が増えていった。関係を持つことはしなかったものの、その後、秀顕さんは「娘を誘惑した」と美和子さんから責められてしまう。
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【前編を読む】シングルマザーと結婚、“娘”は10歳年下…「あの子のほうがお似合い」と言われた妻のひきつった笑みと、2年半で終わった家庭生活
結婚生活は2年半ほどで破綻した。ひとり暮らしを始めた秀顕さんは、淡々と仕事をしながら、中高時代や専門学校時代の友だちと旧交を温めた。もう恋にも結婚にも縁がないだろうと思っていたが、28歳のときに仕事で知り合った同い年の恵里さんと、交際3ヶ月で結婚した。
「恵里は正直で、少しのんびりしたところのある優しい女性なんです。つきあおうと言ったら、ひとり娘だから親に挨拶に来てほしいと言われ、つきあうことを報告しようとしたら、親はすっかり結婚だと勘違いしちゃって。おとうさんもおかあさんも明るくて、僕が離婚した話を聞いても動じなかった。大きなゴールデンレトリバーが僕を弟のようにかわいがってくれて(笑)。家庭の雰囲気にやられましたね、とても居心地がよかった」
暗中模索しながら家庭を作るより、すでにこういう家庭で育った女性と彼女の実家近くに住むのもいいなと思ったと秀顕さんは当時を振り返る。
順調だった二度目の生活
恵里さんの実家近くにマンションを借りて、二度目の結婚生活はスタートした。
「すぐに息子ができて、2年後には次男が生まれて。また男だらけになりましたが、結婚生活は順調でした。義母が手伝ってくれることもあって、恵里は小さな子がふたりいてもイライラしているのを見たことがありません。子どもに対しても、おっとりと楽しそうに話すので、うちの子たちは金切り声を出したことがないですね」
英才教育とも無縁だったが、恵里さんは暇があると子どもたちを児童図書館につれていった。秀顕さんも何度も一緒に行った。恵里さんは子どものころから絵本が大好きだったのだという。彼女の趣味は絵を描くことだった。秀顕さんが子どもたちを見ているから、好きなようにしていいよというと、ずっと鉛筆でスケッチをしている。子どもたちが大きくなると、妻は水彩画を描くようになった。
彼自身は、独立起業の夢を抱きながらも、やはり自分には会社組織に属しているほうが向いていると判断、1度転職して今もその会社に勤めている。
「長男も次男も高校までは公立校でした。ふたりともスポーツ好きで、学校生活を楽しんでいたみたいです。長男は高校時代からスペイン語に興味をもっていて、大学時代は短期留学を繰り返し、スペイン語を活かせる商社に就職しました。次男は高校を出て専門学校へ。それぞれ自立の目処がたったとき、妻とふたりで乾杯しました。僕にとってはできすぎた妻でした」
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