売上高7800億円! アイリスオーヤマはなぜ中国製並みの安さで白物家電を売れるのか 急成長の秘密に迫る
白物家電からコメ、飲料水にいたるまで、幅広い生活用品を手がけ、目下、急成長を遂げているのが「アイリスオーヤマ」である。グループ全体で約7800億円を売り上げており、その原動力がユーザー目線の創業者・大山健太郎会長(80)のアイデア商法だ。【大西康之/経済ジャーナリスト】
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【写真を見る】家電だけじゃない! 驚異の成長を見せる分野とは?
日本の家電が絶滅の危機に瀕している。日立製作所は昨年、家庭用エアコンの開発・製造からの撤退を発表した。日立は冷蔵庫や洗濯機などを作る子会社を売却する観測もある。8月に本社を東京都港区芝浦から川崎市に移した東芝は、2016年に白物家電事業を中国の美的集団(マイディアグループ)に売却しており、シャープは会社ごと台湾のホンハイ(鴻海精密工業)に買われた。
昨年はテレビの国内販売シェアで初めて中国勢が51%と過半に達した。滅びゆく恐竜さながら衰退の一途をたどる「日の丸家電」。都内の家電量販店で「新生活応援!」と銘打った冷蔵庫と洗濯機のセットの値段を見ると日本メーカーは8万円、中国メーカーは5万円。店員に話を聞くと「若い世代は迷わず中国メーカーを選ぶ」という。
家電の売上高は4600億円強
絶滅寸前の「日の丸家電メーカー」を尻目に、強(したた)かに成長している会社がある。日用品から食品、家電までを手がけるメーカーのアイリスオーヤマ(本社・仙台市)だ。
1980年代に家庭用の収納ケースやペット用品といったプラスチック加工の日用品で成長したアイリスは、2010年にLED(発光ダイオード)照明事業に本格参入。その後、布団乾燥機、室内の空気を循環させて空調の効きを良くするサーキュレーターなどのヒット商品を連発し、自社ブランドの炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、エアコンから液晶テレビまで販売する「総合家電メーカー」に成長した。今や「日の丸家電」の中堅メーカーといっても過言ではない。
同社は非上場会社なので詳しい財務データは公表されていないが、グループの2024年度の売上高は7760億円。関係者によると「およそ6割が家電」というから家電の売上高は4600億円強になる。
パナソニックの白物家電事業を担う「くらしアプライアンス社」(24年度以降は本体のくらし事業部門に再編)の2023年度の売上高が8887億円。売却がうわさされている日立の白物家電子会社「日立グローバルライフソリューションズ」の売上高が3676億円(2025年3月期)で、アイリスの白物家電はその中間に位置している。
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