売上高7800億円! アイリスオーヤマはなぜ中国製並みの安さで白物家電を売れるのか 急成長の秘密に迫る

ビジネス

  • ブックマーク

強みはオーナー経営で非上場

 炭酸水やお茶の市場は日本の老舗メーカーや外資がひしめく激戦区だが、ペットボトルやラベルを内製し独自の販売ルートを持つアイリスは、LED照明の時と同じように、その圧倒的なコスト競争力で着実にシェアを高めている。健太郎氏は言う。

「アイリスの強みはオーナー経営で非上場であること。上場したら会社の利益は株主のもので、ステークホルダーのために経営しなくてはならない。重要な意思決定は株主総会での承認が必要なので時間もかかる」

「東日本大震災で日本の東半分がやられた時、私はすぐさま大連(中国)に飛んで増産の号令をかけた。コロナの時も、どこよりも早くマスクを増産して消費者に届けた。経営判断に必要な情報は常に売り場から上がってきて、それらのデータを基に事業計画を立てているのは20代の社員です」

 近く到来が予想される南海トラフ地震や首都直下型地震で被災者を救うのは、アイリスの「コメと水」かもしれない。「失われた30年」からいまだ立ち直れない電機大手は動脈硬化を起こした恐竜さながら。軽やかに環境に適応するアイリスは、今も4倍速で進化を続けている。

大西康之(おおにしやすゆき)
経済ジャーナリスト。1965年生まれ。愛知県出身。88年、早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。98年、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員を経て2016年に独立。著書に『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』『流山がすごい』『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』など多数。

週刊新潮 2025年9月25日号掲載

特別読物「白物家電をなぜ格安で作れるのか 売上高7800億円『アイリスオーヤマ』急成長の秘密」より

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[6/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。