「タカイチだけはイヤ」と叫ぶ韓国 コイズミの「エセ保守」騒動に一喜一憂?――鈴置高史氏に聞く
自民党総裁に高市早苗・前経済安全保障相が就任したらどうしよう――とうろたえる国がある。韓国だ。「謝罪好き」の石破茂首相の後を「謝らないタカイチ」が継いだら、対日攻撃の武器が無くなるからだ。その思いは左派の李在明(イ・ジェミョン)政権にも保守派にも共通すると、韓国観察者の鈴置高史氏は解説する。
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日本人は極右を選ぶな
――自民党の総裁選。韓国の「押し」は誰ですか?
鈴置:特に「押し」とされる候補はいません。ただ、「絶対イヤな人」は1人います。高市氏です。左派系紙、ハンギョレの社説「石破首相辞任、次期首相に『極右』だけは避けて欲しい」(9月9日、日本語版)が率直に表明しています。ポイントは以下です。
・高市前経済安全保障担当相は、「歴史修正主義者」と批判された安倍晋三元首相よりさらに極右的だと評される人物だ。
・日本が再び歴史対立を引き起こすことになると、韓国と日本の協力は難しくなり、中国を刺激して東アジア情勢も不安定になる。日本の国益のためにも、「極右首相」の選出だけは防がなければならない。
保守系紙の朝鮮日報も「高市首相」に極度の警戒感を表明しました。「『毎年2度は靖国神社に必ず参拝』極右のタカイチが次期総理に浮上」(7月25日、韓国語版)です。
・タカイチは安倍晋三元首相の政治路線を受け継いだと評価される。第二次世界大戦のA級戦犯を合祀した靖国神社を毎年2回直接参拝する。昨年、自民党総裁選挙の時「首相になっても(靖国を)参拝する」と語った。
・独島問題に関連し「韓国にこれ以上構造物を作らせないようにする」とも発言した。日帝強占期[植民地時代]の朝鮮人強制徴用も否定する。
・タカイチが首相になる場合、今回の[参議院]選挙で14議席を獲得し浮上した右翼、参政党と差別化するため、より強い右翼路線に傾く可能性もある。
記事の日付からも分かりますが、朝鮮日報は自民党が参議院選挙で負けるや否や「極右政権」の心配を始めたのです。
「謝り続ける日本」が要る
――なぜ、それほどに高市氏を恐れるのでしょうか?
鈴置:韓国にとっては「謝り続ける日本」が必須だからです。歴史問題を言いたてることで日本に対し優位に立つ――のが韓国の対日外交の基本です。
「韓国にヘコヘコ謝るイシバ」が運よく政権に就いて、せっかく「謝らないアベ」の路線を断ち切れそうになったのに「安倍二世のタカイチ」が登場すれば、元の木阿弥です。
石破氏は2017年と2021年の2回にわたり、韓国・東亜日報に対し「韓国人がいいと言うまで日本は謝るべきだ」との趣旨で発言しています。
石破氏はなかったことにしたいようですが、「『韓国が納得するまで謝る』イシバは“第2のハトヤマ政権”だ…尹錫悦が期待する根拠」に2度にわたる発言を翻訳・記録してあります。
韓国にとって「謝り続ける日本」の存在は、対米・対中外交でも重要です。21世紀初めから、米国は米日韓による中国包囲網作りに乗り出しました。しかし、中国が怖い韓国は、なんとかして包囲網への参加を拒否したい。
そこで「米国とスクラムを組みたいのはやまやまだが、日本がちゃんと謝罪しないので『韓米日』には参加できない」との屁理屈をこね始めたのです。この作戦の創業者は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でした(『韓国消滅』)第4章第1節「日本を見下し『独立』を実感」参照)。
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