「タカイチだけはイヤ」と叫ぶ韓国 コイズミの「エセ保守」騒動に一喜一憂?――鈴置高史氏に聞く
韓国に唱和する朝日新聞
仮に何度、日本が韓国に謝ろうと、米中対立が激化した際にはすかさず「日本はきちんと謝罪していない」と言い出して、米中板挟みから逃れる作戦です。
だから韓国人は、日本の謝罪が本物かどうかの解釈権は当然、自分たちにあると考えています。それに、日本にも韓国に唱和して「謝罪は不十分だった」と語る人がいます。石破氏がその典型ですし、左派メディアも唱和派です。
朝日新聞は8月23日に東京で開かれた日韓首脳会談に関する社説「日韓首脳会談 訪ね合う関係を大切に」(8月24日)を載せました。
ここでも「日本側は今後も、過去に向き合う姿勢と韓国側の複雑な感情への配慮が求められるだろう」と「謝罪」という単語を使わずに謝罪を呼び掛けています。朝日新聞の論説委員会も「さらなる謝罪が必要だ」とはっきり書けば、ネットで炎上するのは分かっているのでしょう。
総裁選に出馬したほかの候補者の対韓姿勢は明白ではありませんが、過去の言動から見て「高市首相」が「ヘコヘコ」と謝ってくれないのは確実です。
しかし、「高市首相」が謝らないからと言って反日路線に切り替えれば、米国から見捨てられる可能性が高い。そこで左派系紙も保守系紙も、韓国メディアは声を合わせて「タカイチ総裁・総理」の登場阻止に動くのです。
「イシバ二世」小泉が韓国にエール?
韓国が自民党の総裁選をやきもきして見ていた9月下旬、候補者の1人、小泉進次郎農相の陣営が「ビジネスエセ保守に負けるな」などとSNSで発信するよう、支持者に要請していたことが露見しました。
9月26日、小泉氏は「他の候補を非難する意図はなかった」と弁解しましたが、自身と一騎打ちを演じることになりそうな高市氏を誹謗中傷したと見るのが常識でしょう。
韓国から言えば嬉しいことに「極右のタカイチだけは総裁・総理にするな」と叫んできた自分たちに和する声が、日本の自民党からあがったわけです。
ただ、この誹謗中傷が裏目に出て、高市氏がかえって有利になるかもしれないと心配する向きもあります。聯合ニュースの「日本のコイズミ、選挙キャンペーンの『コメント工作』に困惑…情勢に影響出るか」(9月27日、韓国語版)などです。
なお、小泉氏も靖国神社参拝の常連なので、韓国からは警戒されてきました。しかし今回の誹謗中傷事件で、韓国では「イシバ二世」として人気があがるかもしれません。
靖国参拝にも反発できない
――高市氏が政権を握ったら、ハンギョレが主張するように日韓関係は悪化するのでしょうか?
鈴置:しないと思います。例えば、高市氏が首相として靖国神社を参拝したら、韓国世論は確実に反発するでしょう。ことに今、韓国人の多くは「日本に譲歩してやったのだから、日本も韓国の言うことを聞くべきだ」と信じています。
――韓国が何か譲歩しましたっけ?
鈴置:尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の時の「徴用工合意」を破棄しない――ことが譲歩だと考えているのです。国家間の約束を破っていないのに過ぎないのですがね。何度も日本との条約や合意を平気で破ったことからも分かるように、韓国人は法律や約束を守る意識に乏しい。このため「約束を破らなかった」ことで日本に恩が売れたと考えるのです。
もっとも、「首相の靖国参拝」に韓国世論が反発しても、それを受けて李在明政権が日本に強硬策を打ち出すのは難しい。なぜなら、米国が「反日」を許さなくなったからです。「歴史問題を言い訳にして中国包囲網への不参加を決め込む」韓国の歴代政権のペテン劇を、米国の外交当局者もすっかり見透かしました。
バイデン(Joe Biden)大統領は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し「中国包囲網に参加しないのは日本が謝罪しないからではなく、中国が怖いからだろう」と図星を指しました。『韓国民主政治の自壊』第3章第2節「『慰安婦を言い続けるなら見捨てる』と叱った米国」に詳述してあります。
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