「タカイチだけはイヤ」と叫ぶ韓国 コイズミの「エセ保守」騒動に一喜一憂?――鈴置高史氏に聞く
政権幹部は反米活動家ばかり
――李在明政権はゴリゴリの左翼政権。「在韓米軍撤収」「米韓同盟消滅」こそ、願ったりかなったりでは。
鈴置:李在明大統領が任命した政権幹部はほとんどが反米韓同盟派です(「トランプ政権から『共産主義者』と見切られた李在明、いつまで猫を被るのか――鈴置高史氏が読む」参照)。
首相、大統領秘書室長、与党代表のトップ3人が学生運動出身で反米活動家でした。さらに、駐米大使に指名したのは反米・反日の文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の外交部長官です。米国にケンカを売っているとしか思えない布陣です。
でも、本性を見せて米国を怒らせるわけにはいきません。国民の8-9割が米韓同盟の維持を願っているからです。もし、在韓米軍撤収の動きが本格化すれば、政権打倒運動が巻き起こるのは確実です。
そこで「反米・反日」の本音は封印し、「親米」の猫を被ってきたのです。もっとも韓国専門家の間では「猫被り」がいつまで持つのか、もし本性を現すとしたら何がきっかけとなるのか、議論の的でした。
もちろん、韓国の使い走りのような専門家もいます。「反日を捨てた韓国に対し日本も譲歩し、スクラムを組もう」などとおめでたいことを言っています。先ほど引用した朝日新聞社説「日韓首脳会談 訪ね合う関係を大切に」にも以下のくだりがあります。
・李氏には、歴史認識などをめぐり日本を辛辣(しんらつ)に批判した過去がある。このため日本側には、李氏の大統領就任で日韓関係が暗転することを不安視する声もあった。
・だが、大統領に就くと「実用外交」を掲げ、首脳同士が行き交う「シャトル外交」の再開に意欲を示すなど、対日関係を重視する姿勢を示した。訪米に先立つ訪日を決めたのも、その表れだろう。
・さらに、トランプ氏は日韓など同盟国に防衛費や駐留米軍経費の増額を求める構えをちらつかせている。北朝鮮との不用意な取引に挑む心配もぬぐえない。
・そうしたなか、自由や民主主義といった普遍的な価値観を共有する韓国の存在は、日本にとって大きい。
米軍を引きたいなら引けばいい
――「お花畑」ですね。
鈴置:「韓国とは自由や民主主義といった普遍的な価値観を共有する」と言い切っているところがまず、すごいのです。天変地異が起きたわけでもないのに大統領が戒厳令を宣布し、国会に兵を送る国と「価値観を共有する」……とは。
朝日新聞がこの「お花畑社説」を載せて1か月もたたないうちに、猫を被っていた反米左派政権は本性を現しました。韓国経済新聞の「李、在韓米軍再配置への反対を意識か…『外国軍なしで自主国防は不可能か?屈辱的な思考』」(9月21日、韓国語)によると、李在明大統領は9月21日、SNSで以下のように発信しました。
・外国軍隊がなければ自主国防が不可能なように考えるのは屈従的思考だ。強力な自主国防の道を開く。
・経済力や文化力を含む統合的な国力を育て、国防費を増やし、士気高いスマート強軍に再編し、防衛産業を強力に育成し、安保外交強化で多国間安全保障協力体系を確保する。
要は米国に対し「在韓米軍を撤収したいなら、すればいい」と言い放ったのです。さらに「多国間安全保障協力体系」との言葉を使い、米国との同盟を辞め、周辺大国と条約を結んで平和を実現する、と宣言したのです。
韓国の左派は伝統的に同盟を嫌い、条約を張り巡らすことで安全を担保する多国間安保を好みます。左派政治家の祖ともいうべき金大中(キム・デジュン)氏は1971年の大統領選挙で「四大国保障論」を掲げました。「米ソ中日が朝鮮半島の安全を保証する」という典型的な多国間安保論です。
これを真正面から批判したのが米韓同盟堅持派の朴正煕氏でした。「同盟を失えば北朝鮮の南進を呼ぶ」と訴えて金大中氏に勝ったのです(『韓国民主政治の自壊』第4章第2節「保守も左派も核武装に走る」参照。
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