「進行すると膝に水がたまり…」 2400万人が悩む「変形性膝関節症」を自分で治す方法
3種類の「膝皿ストレッチ」
次に3種類の「膝皿ストレッチ」です。前述の通り、膝蓋下脂肪体が硬化すると、膝皿周りの組織と癒着を起こします。「膝皿ストレッチ」の目的は、おそらくガチガチになっている膝蓋下脂肪体をほぐしてやり、さらには膝皿とつながる靭帯や筋肉を伸ばすこと。そうやって膝皿の周辺を柔らかくしてあげるのです。
初めは「膝皿ゆらし」です。両手の親指と人差し指で膝皿を四方から軽く押さえます。そのうえで、膝皿を上下にスライドさせる。回数は10回です。次は膝皿を左右に10回スライドさせます。これを1セットとして10セット行ってください。1日あたり2~3度行います。膝皿ゆらしは、即効性があって、痛みのある方はその場で“効果”を実感できます。
次のストレッチは「膝伸ばし」。椅子に浅く座って痛みがある方の脚をできるだけまっすぐ伸ばします。変形性膝関節症になると膝皿まわりや裏筋が硬くなってしまい、左右にある靭帯のバランスが崩れがちです。すると、もともとすり減っていた関節の軟骨がさらにすり減りやすくなってしまう。「膝伸ばし」は、そのバランスを元に戻してあげるストレッチです。膝を伸ばしたら両手で膝皿より少し上の部分を押してさらに伸ばします。これを30秒続け、10回で1セット。1日で2~3セットを目指してください。
3番目は「膝曲げ」です。これは、膝蓋下脂肪体のクッション機能を取り戻すための重要なストレッチです。
まず、背筋をピンと伸ばして椅子に深く座ります。次に痛みのある膝を持ち上げ、両手で脛を抱えます。この際、脛のできるだけ下のほうを持ってください。膝をそのまま胸に引き寄せて、30秒キープします。30秒を10回やって1セットとして、これを1日あたり2~3セットやります。
「膝皿ストレッチ」はこの他にも数種類ありますが、基本的に動き出しに痛みを感じている方は「足ぶらぶら15秒」。何年も膝痛に悩まされている方は膝皿ゆらし、膝伸ばし、膝曲げの3種類を行うのが理想です。
いかがでしょうか。進行した変形性膝関節症は、最終的には手術という手段が残されていますが、その前に、自分でできることがあると分かっていただけたら幸いです。
サプリより大切なこと
最後に、これは患者さんからも聞かれるのですが、「サプリメント」の効果について説明したいと思います。
最近は“膝に効く”とうたったサプリの広告をよく見ます。しかし、「膝に効く」と宣伝されている成分の多くは医学的に証明されているわけではないのです(※日本整形外科学会が監修した「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」には、コンドロイチンに有意な鎮痛効果はないと書かれている。またグルコサミンについても、鎮痛効果、機能改善効果、軟骨保護作用はないとしている)。
たとえば、グルコサミンはグルコースとアミノ酸の複合体です。これを飲んでも体の中で消化されるだけで、砂糖と肉を食べるのと大きな差はありません。
むしろ、食事という視点からは、以下のアドバイスをしたいと思います。変形性膝関節症と骨粗鬆症は密接な関係にあります。だから、まず骨を守る食事を取ること。それが関節軟骨を丈夫にする食事でもあるのです。
[4/5ページ]

